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疑念と不安を糧とするGM作物

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写真:マリア・ソリスさんは、様々な色の在来種トウモロコシを栽培している。それらのトウモロコシは、まだ遺伝子組み換え作物に汚染されていない (Emilio Godoy / IPS)

エミリオ・ゴドイ
2013/07/11 IPS

 メキシコでは2005年以降、遺伝子組み換え(GM)作物が法律で規制されているにもかかわらず、GM作物の効果的なモニタリング・システムは存在していない。トウモロコシについては、こうした状況のために、データを取得することが不可能になった。しかし、そのデータが、GM作物の商業栽培を阻止する根拠となっていたかもしれないのだ、と専門家らは指摘している。

 「政府のモニタリングは、GM作物の危険性を証明すべきだった。しかし、健康や環境に有害であると、あえて認めることはなかった」と、非政府組織「トウモロコシを守るネットワーク」のメンバーであるアルバロ・サルガード氏は警告した。

 「このモニタリングによって、アグリビジネス産業の意図が正当化されてしまう。慣行農業の作物のGM汚染は、偶然ではなく、考慮された上で引き起こされたものだ。必要なことは、モニタリングを多数行うことではなく、GM作物が入り込むことを直接的に阻止することだ」と、サルガード氏はIPSの取材に答えて述べた。

 この十年来、「トウモロコシを守るネットワーク」は、北部のチワワ州、南部のイダルゴ州、ベラクルス州、オアハカ州で調査を行い、GM作物の存在を確認してきた、とサルガード氏は述べた。現在は、GM汚染の主な原因と思われるハイブリッド種の分析に取り組んでいる。

 2005年に公布された「遺伝子組み換え生物バイオセーフティー法」には、国内のGM作物の存在を検査する担当機関は、環境天然資源省(SEMARNAT)と環境気候変動研究所(INECC)であると規定されている。

 この法律は、GM作物の「試験栽培及びシミュレーション商業栽培」は、GM汚染を防止するために管理され、守られた地域で行われるべきであり、危険性についての評価も行われるべきであることを規定している。特にトウモロコシについては、メキシコが原産地であり、国内に多種多様なトウモロコシとその近縁野生種が存在していることから、特定の地域内でのGM環境放出を禁止する、特別な保護体制を規定している。

 いくつかの市民団体は、この規定による栽培禁止地域は不十分であり、現存する品種の多様性やその地理的な分布から見ても、実際には、メキシコ全土を、トウモロコシの原産地として定義するべきだと訴えている。

 そのため、専門家らは、官公庁が行っているモニタリングの重要性や、その結果の正確度に、疑いを抱いている。

 「グリーンピース」メキシコ事務所の「GMと持続可能な農業キャンペーン」責任者のアレイラ・ララ氏は、「モニタリングのデータは甚だしく不足している。正確に報告されていない」と、IPSの取材に答えた。

 「グリーンピース」は、2007年にGM汚染が検出されたチワワ州で、視察を行う準備を進めていた。しかし、この地域の治安が非常に悪いため、実行することができなかった。

 米国のモンサント、パイオニア、ダウ・アグロサイエンスの各社は、昨年9月、GMトウモロコシの商業栽培の認可を6件申請した。申請された農地は、北西部のシナロア州と東部のタマウリパス州にあり、200万ヘクタールを超えている。しかし、政府の認可が下りないまま、今年2月に法定期間が切れた。これを受けて、上記3社は再度申請を行った。

 また、この3社とシンジェンタ社は、チワワ州、コアウイラ州、ドゥランゴ州、シナロア州、バハ・カリフォルニア州の622ヘクタールの農地で、GMトウモロコシの試験栽培とシミュレーション商業栽培を行うための申請を、さらに11件提出した。

 またさらに、モンサントは、メキシコ北部の不特定の地域でGMトウモロコシを商業栽培するための認可を3件申請した。

 2009年以降、メキシコ政府は、177件の試験栽培とシミュレーション商業栽培を認可し、その面積は2664ヘクタールに上っている。このようなGM栽培の保証として、GM物質が漏出していないか確認するために、隣接する地域をモニタリングすることが必要だ。

 いくつかの市民団体は、政府との直接対話や情報公開請求を通じて、GM作物に対する公式の態度を模索している。しかし政府は、現在行われているGM環境放出は、法に従って行われたものであり、商業栽培の承認の決定は、科学的根拠に基づいて行われる、と回答するのみである。

 また、GM環境放出の結果公開についての政府の調整プロジェクトは、いまだ公の協議の段階にある。

 INECCの2012年の報告書「メキシコ北部におけるGMトウモロコシの環境放出の影響モニタリングのための指針」は、GM環境放出地域に存在する非標的生物群に関する基準値となるデータは考慮されていないことを示している。

 また、「殺虫性タンパク質や、GM栽培と慣行栽培を組み合わせた様々な試験栽培についての回答には、放出地域に存在する従来種トウモロコシ数種の測定結果が含まれていない」ことも指摘している。

 法律では、どのようなモニタリングを行うべきか特定していないが、次のような調査が必要だと思われる。ひとつは、GM作物の変種についての影響評価に基づいた特別な調査、もうひとつは、影響評価で想定されていない影響を検出する一般的な調査である。

 トウモロコシの原産地であるメキシコは、59種類の在来種と209種類の変種を、年間2200万トン生産している。しかし、農業牧畜農村開発漁業食料省のデータによると、メキシコはトウモロコシを、800万トン以上輸入しなければならない。実際、メキシコは2年前から、約200万トンのGMトウモロコシを南アフリカから輸入しており、さらに15万トンを輸入する予定である。

 メキシコに住む1億1700万人のうち、300万人がトウモロコシの栽培に携わっており、作付面積は800万ヘクタールに上る。しかし、200万ヘクタール以上の農地が、自家消費用のトウモロコシの栽培にあてられている。栽培品種は、白トウモロコシがほとんどであり、飼料に使用される黄トウモロコシは、輸入されている。

 GM作物に反対している環境保護団体、科学者や農民の団体は、少なくとも五つの州で、輸入トウモロコシによる在来種のGM汚染を確認した。この輸入トウモロコシは、政府の貧困撲滅キャンペーンで配られるものだ。

 こうしたことから、市民団体や学会は、エンリケ・ペニャ・ニエト政権がGMトウモロコシの商業栽培を認可する可能性があると、警戒を強めている。なぜならそれらの団体は、GMトウモロコシが、人の健康と環境、生物多様性に対する様々な危険をはらんでいることを、理解しているからだ。

 具体的には今月5日、生産者団体、先住民団体、養蜂家団体、環境保護団体、消費者団体が集まり、裁判所が商業栽培の認可を阻止するように、大規模な活動を行った。

 彼らの主張によると、法で定められた制限事項は効果がない。というのは、様々な州でGM汚染が確認されているからだ。また、認可が申請されている商業栽培は、法的な制限や規制を乗り越え、良好な環境への権利や、在来種トウモロコシの多様な自然資源へのアクセス権を侵害することになる。

 INECCの報告書には、GM作物のモニタリングの妥当性、実現性、報告は、「サンプリング手順とモニタリング・プログラムの計画と実施において、明確に考慮されるべき事柄である」と記載されている。

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