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メキシコ原産 アボカドの歴史

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写真:スペイン語でアボカドを意味する「アグアカテ」の語源はナワトル語 (Creative Commons)

エドムンド・エスカミージャ、ユリ・デ・ゴリタリ
Animal Gourmet

 メキシコから世界に広まった食べ物は、たくさんあります。例えば、ケリーテ、ノパルサボテン、カボチャ、チャジョーテ(ウリの一種)、チャジョーテの根、サツマイモ、アマランサス、チアなどの野菜はメキシコ原産ですし、それ以外にも、メキシコ固有の野菜や果物は、数えきれないほどあります。

 メキシコの家庭の台所では、農業初期の時代に栽培が開始された食材が使用されていて、その歴史は、約7000年にもなります。メキシコ料理の基本的な食材であるトウモロコシ、トウガラシ、アボカドも、早い時期から、食用の作物として栽培が開始されていました。

 最古のアボカドは、約1万年前のもので、プエブラ州のコスカトラン洞窟から出土しました。その後、オルメカ文明(前1500-後200年)の時代には、アボカドは、メソアメリカの人々の食生活の一部となっていました。

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写真:アボカドはメキシコの緑の黄金 (Creative Commons)

 アボカドには、ビタミンA、B、C、Eや、カルシウムやカリウムなどのミネラルが豊富で、モノ不飽和脂肪酸が15%含まれています。モノ不飽和脂肪酸は良質の脂肪分であるため、アボカドは、メソアメリカの人々の重要な栄養源でした。

 アボカドの栽培には、海抜800メートルから2500メートルの高度と、寒暖差のある気候が適しています。樹高は、品種によっては、25メートルを超えるものもあります。

 アボカドには多くの種類があり、メキシコだけに生育するものもあります。例えば、小ぶりで香りの強い品種は、果肉が肉厚でバターのように柔らかく、皮ごと食べることができます。チネネまたはパグアと呼ばれる品種は、形は縦長で、果肉はクリーム色をしていて、熱帯気候の地域で栽培されています。また、非常に大きな実をつける品種もあり、その果肉はほんのり甘く、クリームのように濃厚です。

 アボカドは、5年で実をつけるようになります。実をつけた最初の年は、1本の木に約50個の実がなります。品種によっては、10年目に1500個もの実をつけるものもあります。収穫期は、高度によって異なります。低地では春から夏にかけて、高地では秋から春にかけて、中間の高度の地域では夏に、実がなります。

 スペイン語でアボカドを意味するアグアカテという単語は、ナワトル語の「アウアカクアウィトル」が変形したものです。ナワトル語は膠着語(こうちゃくご。語幹に助辞や接辞が結びついて文法的機能を果たす言語 ―訳者)です。「アウアカクアウィトル」も、「アウアカトル(睾丸)」と「クアウィト(木)」という、二つの単語が結びついてできています。実の形状と、枝から垂れる様子から、この名前がついたと言われています。

 エルナン・コルテスが国王カール5世に送った手紙には、メキシコには膨大な数のアボカドの果樹があると書かれています。

 また、当時のメキシコでは、薬草による治療が非常に進歩しており、ヨーロッパの医療よりもはるかに進んでいたと考えられます。そのため、コルテスの手紙には、メキシコでは医療が非常に発達していて、膨大な種類の薬草があるため、医者を送ってもらう必要はないとも書かれています。その薬草のひとつがアボカドで、様々な治療に利用されていました。

 当時のメキシコには優秀な医者がいて、エルナン・コルテスの命を救ったこともあったため、スペイン王フェリーペ2世は、医師のフランシスコ・エルナンデスをメキシコに送り、1570年、植民地の医療・医師・薬剤管理のためのプロトメディカートという管理制度を作りました。フランシスコ・エルナンデスは、1572年にメキシコに到着して何年間も滞在し、メキシコの薬草について、先住民の知識を学びました。

 メキシコの薬草を研究したエルナンデスは、アボカドの効能を非常に重要視しました。というのは、アボカドには、精子の量を増やして性欲を高める作用があり、種子を砕いたものは、痛みやリウマチを軽減するためにとてもよく効くからです。

 エルナンデスは、その著書に、アボカドの種子はハトの卵ほどの大きさをしていて、アーモンド・オイルによく似た油がとれると書いています。そして、その油は、発疹や傷跡に非常によく効くだけでなく、頭髪の脱毛予防にも効果があること、アボカドは「催淫作用のある非常においしい果実」で、葉はレモンの果樹の葉に似ており、白や黄色の花をつけ、果実は黒く、果肉は濃緑色であることなどを記しています。

 アボカドは、メキシコからカナリア諸島へと持ち出され、後にフランス人たちが、アルジェのハンマ植物園で栽培に成功しました。その後、アボカドは少しずつ広まっていき、この30年間で世界中の人々に親しまれるようになりました。

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