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2015年は危機と混乱の年

ラウル・シベチ
La Jornada 2014/12/26

 米国による対キューバ封鎖とキューバの主権に対する攻撃が始まって半世紀が経過し、2014年は、キューバと国交を回復するというバラク・オバマ大統領の決定をもって、幕を閉じた。これは、喜ばしいニュースではあるが、喜んでばかりもいられない。というのは、この国交回復は、米国が、支配者であり続けるために世界中で混乱を作り出す戦略の一環として、紛争や戦争をあからさまに挑発するようになった時期に、起こったものだからだ。

 2014年は、米国政府が実行した一連の戦略のために、核兵器を持つ国々の間で戦争が起こる可能性もあった、緊迫した激動の一年だった。最も危機的だったのは、ウクライナのケースだ。米国政府は、情勢を不安定化し、場合によってはロシアに対する軍事攻撃を行うために、ウクライナを足がかりとして利用する目的で、ロシア国境付近でクーデターを計画した。米国の戦略は、ロシアが欧州連合(EU)に接近することを完全に阻止するために、ロシアに対する軍事的、経済的、政治的包囲を確立することだった。

 2014年の重大な事柄の中でも、特に指摘すべきことは、米国が、イスラエルによるガザ地区への無差別爆撃をやめさせるための行動を、まったく取らなかったことだ。米国の中東政策は偽善的で、警戒しなければならない。エジプトでは、初の民主主義政権に対するクーデターが起こり、その後、実施された選挙では、米国に無条件で従うアブドルファッターハ・シーシが大統領に選出された。この非常に疑わしい選挙を、米国はすぐさま承認した。

 多くのアナリストが指摘してきたように、シリア、スーダン、イラク、リビアの混乱状態は、力関係を米国に有利に描き直すための手段として、混乱を作り出す戦略が立てられていたことを明白に示している。また、西側諸国の強大な軍事力が、イスラム国を倒すことができない理由については、依然として謎のままだが、この事実によって、テロ組織のイスラム国と米国国防省が、同じ戦略のもとに活動しているのではないかという疑いが強まっている。

 ラテンアメリカで特に関心を集めたことは、メキシコで起こった大量殺人について、オバマ政権が沈黙を守っていることだ。従って、ベネズエラの高官たちが、米国政府から非難・追及されていることについても、オバマ政権がコメントするはずがなかった。

 米国によるニコラス・マドゥーロ政権に対する攻撃がエスカレートした時期が、キューバとの国交回復の時期と重なっていることは、関心を集めてやまない。これでは、どうしても、「米国がキューバと国交を回復する本当の目的は何か」について、考えざるを得ない。

 米国の政策が、対ベネズエラ、対キューバ、対メキシコなど、個別に存在しているわけではないことは明らかだ。目的はひとつ。米国が反抗を許さない地域(カリブ海、中米、メキシコ、南米北部全体)を、引き続き支配することだ。反抗させないためなら、どんなことでも実行する。メキシコでは、21世紀の初めの数年間、民衆が蜂起する可能性があった。しかし、それを妨害するために、民衆に対する戦争が実行された(表向きは麻薬戦争だった)。

 そうは言っても、米国は、メキシコにおいては、金をもらって飼い馴らされた、忠実で従順な政治家たちを、あてにすることができる。このようなことは、ベネズエラ(野党はまとまりがなく、国を導く力もない)においては不可能だし、まして、キューバでは絶対にありえない。キューバの技術者や政治家は、米国にとって扱いにくい人々だ。

 ベネズエラでは、混乱が確実に起こりつつある。同様の混乱は、2014年の初めに、最も急進的な野党勢力が反政府行動を展開したときにも見られた。混乱を誘発させるこのような戦略は、キューバにおいても行われる可能性があり、そうなれば、資本主義文化(特に消費主義と麻薬)や、西側諸国で一般的な金権選挙による民主主義など、あらゆるものがキューバに持ち込まれるだろう。

 米国政府が外交政策の方向転換を図っているかどうかを判断するにはまだ早いが、見たところ、米国には、ラテンアメリカの役割を階層化する意図があるようだと、人民日報は指摘している。アジア太平洋地域で影響力を行使するという米国の戦略は、時代遅れの戦略で、米国はすでにそのことに気づいている。現在、米国は、別の針路に向けて行動を起こしている。キューバとの国交回復は、ラテンアメリカに積極的に関与するために、大きな障害を排除することを意図すると共に、アジア太平洋に戻るという米国の失敗戦略を、慎重に転換することをそれとなく示している(人民日報2014年12月19日)。

 実際、オバマ大統領は演説の中で、キューバ政策が米国を中南米・カリブ海諸国から遠ざけ、キューバ国内で変革が進む可能性を制限していたと述べた。米国は、キューバを通して象徴的に、中南米・カリブ海地域に対する関心を強調したと、人民日報は結んでいる。

 米国が中南米・カリブ海地域に狙いをつけているのだとしたら、1945年以来、中東に焦点を合わせ、ここ2年間はアジア太平洋へと傾いていた米国の外交政策の一貫性のなさが明らかになると共に、われわれは、ラテンアメリカを重視する米国の方向転換にさらされてもいる。

 いずれにしても、ラテンアメリカの人々は、新たな問題に直面している。ここ数年、米国のソフト・パワーは、二つのクーデター(ホンジュラスとパラグアイ)を成功させ、一般市民に対する激しい戦争(メキシコ)を引き起こし、様々な国の政権を追い詰めた(ベネズエラと、ある意味でアルゼンチン)。現在は、アメリカ大陸最大の企業(ブラジル石油会社)に襲いかかっている。すべて言うべきであるから言ってしまうと、いくつかの国の政権が無能力であることによって、明らかに米国の仕事は楽になっている。

 どう考えても、2015年は困難な年になり、戦争や不安定化、世界的な混乱が急激に増加するだろう。このことは、保守政権や進歩主義政権(両者の違いはほとんどなくなってきている)に、悪影響を与える。大衆運動や、それに確信を持って参加している人々にとっては、激しい嵐のような状況で生き、抵抗することを学ぶ機会となる。そのような嵐の中でこそ、本物の船乗りが育つのだ。

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