e-MEXICO

ホーム > ニュース > カルデロンの見込み違い

カルデロンの見込み違い

ロドリゴ・ベラ
Proceso 2013/02/18

 昨年3月24日から26日のローマ教皇ベネディクト16世のグアナフアト州訪問は、当時のフェリーペ・カルデロン大統領と国民行動党(PAN)にとって、政治的には見込み違いのものとなった。訪問は大統領選開始とほぼ同時期であり、この訪問がPANの大統領候補ホセフィーナ・バスケス・モタの勝利を後押しすると予想していたが、結局は敗北した。

 当時、当紙のインタビューに答えた多くの専門家たちは、教皇の訪問はPANを支援するためのものだとする点で、意見が一致していた。というのは、この訪問が大統領選開始の時期に実現されたことを別にしても、教皇の訪問はグアナフアトだけであり、グアナフアトは20年以上ずっとPANが支配してきた州で、かつ、メキシコでカトリック人口の割合が最も高い州だからだ。

 ヘルマン・マルティネス・カサレスは、PANの党首時代、メキシコ全体を「グアナフアト化する」という野心的な政治的目標を掲げていた。

 「グアナフアトはPANの誇りだ。(…)我々はもう、メキシコをグアナフアト化しつつある!」と、マルティネスは何度も繰り返していた。

 そのため、政治研究家のエドガー・ゴンサーレス・ルイス氏は、教皇の訪問前に、この訪問は、PANとカトリックの高位聖職者が、カトリックの伝統の強いこの地域を起点にして大統領選に影響を及ぼしていくための計略だと警告していた。

 ゴンサーレス・ルイス氏は、「ラッツィンガー(ベネディクト16世)が訪問するのはグアナフアト州だけだ。グアナフアトが選ばれたのは、そこがカトリックの保守派にとって最も重要な防塁だからだ。PAN、カトリック教会、極右グループがこれほどの影響力を持っている地域は、他にはない。彼らは教皇の訪問を、政治的な基盤と大統領選への影響力を強化するために利用するつもりだ」と指摘していた。(プロセソ1836号)

 一方、メキシコ国立自治大学(UNAM)の社会学研究所のウゴ・ホセ・スアレス博士は、ラッツィンガーのミサがセロ・デル・クビレテで行われることになったのは、カトリックの強い象徴性によるものだとし、次のように指摘した。

 「セロ・デル・クビレテという選択は、巡礼地であることのほかに、階級制が国全体を統率するという神学的なメッセージでもある。また、とりわけ明確に示されているのは、殉教神学である。というのは、セロ・デル・クビレテのキリスト像は両腕を広げており、その足下では、天使が殉教の象徴である、いばらの冠を捧げているからだ」

 「教皇は、本質的なもの、純粋な信者の形成、王キリストの殉教を、その広範な象徴主義から好んでいる」

 また、スアレス博士は、グアナフアトがシナルキズム運動の中心地であったことも強調した。2010年のメキシコ地理統計局の調査によれば、グアナフアトにおけるカトリック信者の割合は93.83%であり、国内で最も高く、全国平均82.72%を上回っている。(プロセソ1842号)

 教皇がグアナフアトを訪問し、王キリスト像の下で大勢を前にミサを行い、教皇とフェリーペ・カルデロンが会談し、そして、大統領選が始まった。各候補者は、メキシコ司教会議本部の司教総会と会合を持ち、司教たちやベネディクト16世が関心を持っている中絶、同性婚、宗教活動の自由についての憲法改正などのテーマについて、その立場を明らかにした。ホセフィーナ・バスケス・モタの考えが、教会側と最も一致するものだった。

 しかし結局、PANのバスケス候補は、7月1日の大統領選挙で落選した。カトリック教会と、今回辞任する教皇の支持は、バスケス候補に何ももたらさなかった。そして今、PANではない政権と、ベネディクト16世ではない教皇の、新しい環境が生まれる。

 メキシコとバチカンの関係を専門とする研究者のロベルト・ベラスケス・ニエト氏によると、「エンリケ・ペニャ・ニエトの制度的革命党(PRI)政権と、次期教皇の体制との間には、必然的に新たな関係が生まれることになる」

 目下のところ、ペニャ・ニエトは、教会とどのような関係を築くか決定するどころか、バチカンの新しい大使さえ任命していない。「カルデロンが任命したフェデリコ・リング・アルタミラーノ大使がまだ駐在している」と、ベラスケス氏は述べた。

 また、ベラスケス氏は、新しい教皇がメキシコに対してどのような方針をとるか、まだわからないとし、「メキシコは、バチカンにとって非常に重要な国だ。というのは、カトリックの信者の数が非常に多く、また、経済的、軍事的に世界最強の米国に隣接しているという、地理的にも特別な位置にあるからだ」と述べた。

 ベラスケス氏は、「バチカンが新教皇即位のミサにペニャ・ニエトを招待し、ペニャ・ニエトが他の国々の元首と共に、この重要な宗教行事に出席すること、そして、それが、新しい関係構築の始まりとなることは確実だ」と述べた。

↑ PAGE TOP

inserted by FC2 system