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ビッグデータはどのように生活を変えているか

グーグルの見積もりによると、インターネット上で48時間ごとに発生するデータの量は、文明の開始から2003年までの間に発生したデータの量と、ほぼ同量である。このことは、ビッグデータの持つ能力を示している。ビッグデータは、私たちの知らない間に、生活の中のますます多くの領域に影響を及ぼしている。

エドゥアルド・マリン
alt1040 2013/08/19

 ビッグデータという言葉は、この2-3年で非常に一般的になったが、当初は、初歩的な二つの単語が結合した簡単なもののように思われていた。しかし、15年以上前に始まったビッグデータの進化が、今では非常に重要な意味を持つようになったことは、確かなことである。その重要性は、クラウド・コンピューティングやインターネットなどのコンピューターの世界においてだけではなく、私たちの生活のあり方にまで影響を及ぼしている。というのは、ビッグデータは、私たちが気付かないうちに、日常生活におけるますます多くの場面に、少しずつ入り込んできているからである。

 ツイッターに短文を投稿するような簡単なことから、アマゾンで商品を買ったり、アイチューンでお気に入りのバンドの最新シングルをダウンロードしたりすることまで、私たちの日々の生活には、ビッグデータがかかわっている。というのは、簡単なことに思われるこれらの行為を行うとき、私たちは、誰かに利用されることになるかもしれない重要な情報を、ビッグデータに提供しているからである。

 ビッグデータの概念と商業的な可能性をもう少し理解するために、ビッグデータとは何であるかを、はっきり知っておく必要がある。ビッグデータとは、データや情報の保存と分析にほかならない。そのデータや情報は、一般の人々から、無数の通信プラットフォームを通して提供される。通信プラットフォームとは、インターネットや通常の電話による通話、携帯電話によるショートメッセージの送信など、私たちが毎日利用している通信環境のことである。

 日々、送受信されるデータの量は、信じられないほどの量である。グーグルのエリック・シュミット会長が発表したグーグルの調査結果によると、48時間ごとにインターネット上で発生するデータの量は、人類が文明の開始から2003年までの間に発生させたデータの量と、ほぼ同量である。これは、一言で言えば、あまりにも多すぎる。そして、これらすべてのデータは、消えてしまうのではなく、ますます強力になるスーパーコンピューターやサーバーを利用して分析された後、企業や組織にとって役立つ情報が提供されるのである。

 例えば、スーパーマーケットの中には、より効果的に商品を配置するために、様々な時間帯の買い物データを利用する店もある。ウォルマートがビッグデータの情報を元に行った調査によると、ハリケーンの数時間前には、ある特定のキャンディーの売り上げが大幅に増加する。そこで、米国のいくつかのスーパーマーケットでは、ハリケーンの予報が出ると、このキャンディーを懐中電灯や電池、缶詰の食料品の棚の近くに配置する。データを利用したシンプルな販売戦略である。

 もちろん、ビッグデータの利用は、商業的な利用だけにとどまるものではない。IBMは、コートジボワールのある都市で、一日の様々な時間帯における市内の動きを知るために、1カ月間、市民の通話情報を調査した。電話中継塔のデータを利用することで、GPSを使わずに調査を実施することができた。その結果、市民の公共交通機関を改善するためには、バスの路線が2路線不足していることや、既存の1路線をもう少し延長する必要があることがわかった。これは、ビッグデータがあってこそ、可能になったことである。

 他にも、出会い系サイトなど、もっとありふれたビッグデータの利用方法もある。また、政治家たちでさえ、特定の社会部門における得票率を予測するために、この技術を利用している。バラク・オバマも2012年の選挙において、ビッグデータを利用した。これは、市場調査であって、政治工作ではない。ビッグデータは、単なる世論調査よりもはるかに正確な、非常に役に立つ調査手段である。なぜなら、ビッグデータは、グーグルでの検索回数や、自由な情報共有の場であるソーシャル・ネットワーク内でのメッセージなどをベースにしているからである。

 ビッグデータを利用した魅力的で注目すべきプロジェクトが、実現を目指してすでに進行中である。

1. 米国の議会図書館は、米国で人々がどのように生活していたか、何を話題にしていたか、一般的な世論はどのようなものであったかについて、将来知ることができるように、ツイッターのログをベースにしたプロジェクトを進めている。

2. 米国の疾病管理予防センター(CDC)は、インフルンザのようなウイルスが発生する前に、予防と準備を行うために、グーグルにおける検索の内容をベースにした研究を行っている。例えば、「子供が病気」などの検索が頻繁に行われた場合、病気が拡大する前に予防措置をとったり、地域の病院で準備を行ったりすることができる。

3. 国連は、ソーシャル・ネットワークやその他のメディアのデータに基づいて、アフリカのより失業率の高い地域を特定し、貧困の解消に役立てる研究を行っている。

ビッグデータのネガティブな側面

 もちろん、この技術のすべてがよいというわけではない。というのは、ビッグデータは、私たちが日々発信するデータすべてを分析することを意味しているからである。いかなる媒体からインターネットを利用しても、スーパーマーケットで買い物をするときでさえも、私たちは、(気付かないうちに)データを発信している。つまり、データがどのように利用されるかによって、ビッグデータは、私たちのプライバシーとセキュリティーに対する大きな脅威にもなり得るのである。

 例えば、ネットユーザーの許可を得ずにデータや情報を蓄積することについては、エドワード・スノーデンによって暴露された情報収集・監視プログラムPRISMの例がある。国家安全保障局(NSA)は、米国の市民に対してだけでなく、世界中の市民に対しても、このプログラムを適用している。このプログラムは、フェイスブックやGメールのような、一般的に広く利用されているサービスを通して行われる。

 私は、PRISMのような侵略的なプログラムに賛成するつもりはまったくないし、ビッグデータを正当化するつもりもない。しかし、これほどたくさんの情報を、インターネット上で自由に共有することを考えれば、PRISMのようなプログラムが作られることは、「おそらく」予想できたことだろう。私たちはこのことを、EMC社のイベント「EMCワールド2013」に出席したときに理解した。というのは、RSAセキュリティ社の社長が、このイベントにおいて、インターネット上のプライバシーというものは、2020年までに、廃れた概念になるだろうと断言したからである。この発言は、大きな論争を引き起こす手厳しいものであったが、私たちは、その時点でようやく、この発言の根拠となっているものを理解し始めたのである。

 ビッグデータの進化と拡大は、すでに切迫していて避けることができない。多くの企業は、ビッグデータをベースにして、ビジネス・モデルを作成している。従って、重要なことは、プライバシーが侵害されて個人の情報がビッグデータに渡ってしまうことに対して、どのような制限を設けるか、どのようにこの技術を利用していくか、ということである。未来のベースとなるものは、デジタル通信とますます増加するデータである。ビッグデータが、現在も今後も、私たちの生活の重要な部分を占めていくことは、疑う余地のないことである。

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