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米国にあまりに近く、トルティージャからあまりに遠い

ここ数年、米国は、トウモロコシからのエタノールの生産を増大させた。一方で、トウモロコシの原産地メキシコでは、国民の日常の食事の80%をトウモロコシに依存しているが、この穀物を原料とする有名な主食、トルティージャの値段は、2005年から2011年の間に、60%値上がりした。

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写真:挿絵:トウモロコシは富裕層の自動車の燃料となり、貧困層の口には入らなくなっている

ヘラルド・イグレシアス
Rel-UITA 2012/08/20

 今年5月、メキシコで、アクション・エイドの研究報告書「バイオ燃料=飢餓の火付け役」が発表された。その中で、米国におけるバイオ燃料の生産を促進する政策が、どのようにして、メキシコにおける食料品の価格形成に、大きな影響を及ぼすかについて、詳細に述べられている。メキシコは、ここ数十年、自国の食料農業生産を崩壊させることに邁進してきた。

 この研究は、タフツ大学の包括的発展と環境問題研究所の調査研究プログラムの指導者、ティモシー・ワイズ氏と、米国のアクション・エイドの調査研究責任者、マリー・ブリル氏が行ったものだ。

 米国は、トウモロコシの価格決定において重要な国であるが、国内のトウモロコシ収穫高の40%以上をエタノール生産に充てている。この割合は、言い換えれば、世界のトウモロコシ生産量の15%ということである。

 北米自由貿易協定(NAFTA)発効以降、メキシコは、食糧安全保障と食料主権の面において、恥ずべきほど多くを失ってきた。食料生産が減少し、食料輸入が増加し、雇用数と農村人口が減少した。

 ワイズ氏によると、NAFTAの発効によって、「トウモロコシの輸入におけるメキシコの(米国への)従属度が強まった。1990年から1992年には、他国から輸入したトウモロコシは、消費量全体の7%であったが、今日では35%を占めている。また、他の穀物についても同じことが起こっている。例えば、小麦については、以前は(全消費量に占める輸入分の割合は18%であったが、現在は約60%である。米は、60%から約80%へ、大豆は75%からほぼ100%へと増加した。

 (さらに、ワイズ氏はこう続ける)1990年には、メキシコの、米国からの食料輸入額は、26億ドルであった。それが、2000年には64億ドルまで増加し、2011年には184億ドルを記録するまでになった」

 一方、ワイズ氏の研究によれば、米国においてエタノールを生産するためにトウモロコシを使用することで、2006年から2009年の間に、トウモロコシ価格が22%値上がりした。米国は、今日、138億ガロン(1ガロン=3.8L)のバイオ燃料を生産しており、それは、2000年の生産量の約9倍となっている。

 2005年以降、米国におけるエタノール生産の拡大が、メキシコ国民に15億-32億ドルの出費を強いることになった。トウモロコシの輸入増加のためである。

 エルネスト・ペレア氏は、「『コモディティーズ』を値上げした私生児=トウモロコシ」という興味深い記事において、「もしバイオ燃料用の穀物の使用による追加需要がなければ、2007年のトウモロコシの価格は、12-30%低かったであろう」と指摘している。

 かつて、トウモロコシを自給自足していたメキシコは、今や、世界第1位のトウモロコシ輸入国であり、世界第2位の食料輸入国である。

 食料不安が非常に深刻であるため、メキシコは、国連食糧農業機関(FAO)によって、国際的な食糧支援を必要とする国であり、アフリカの28カ国と同様の状況にある、と見なされるまでになっている。

 NAFTAによって、メキシコは米国に近づき、トルティージャから遠くなってしまった。今日、米国への食料依存の度合いは、驚くばかりである。しかし、米国国民もまた、問題に立ち向かっている。ここ50年以上の間で最悪の干ばつが、その国土の60%以上に損害を与えているのだ。このことは、バイオ燃料の生産に加えて、メキシコ人の胃袋にとって、もう一つの悪いニュースである。

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