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バイオ燃料が気候変動を悪化させる

シルビア・リベイロ
La Jornada 2012/05/19

 最近の欧州連合(EU)の研究は、バイオ燃料が、温室効果ガスの排出を増加させることを示している。なぜなら、バイオ燃料の生産が、森林破壊、土地の大規模な浸食、世界各地での農業境界線の森林地域への進出などに、影響を及ぼすからだ。

 間接的土地利用変化(英語の頭字でILUC)におけるバイオ燃料の影響が測定された結果、燃料のための穀物の使用は、事実上、誰かが飢餓に苦しむか、他の場所に農作物を植えて、農業境界線を森林や自然界に侵入させることを意味している、と結論された。植付けのために森林を焼くことは、大気中に大量の炭素を排出するため、バイオ燃料が持つと思われるいかなる利点も、差し引きゼロになる。EUによる、15種類のバイオ燃料作物に関する別の研究は、ヨーロッパのバイオ燃料に関する目標や政策が、10年間で450万ヘクタールの土地利用に、間接的な影響を及ぼす可能性があることを示している。

 その上、遺伝子組み換えの大豆やセイヨウアブラナ、アブラヤシ、ヒマワリを原料とするバイオ燃料の生産過程では、化石燃料よりも多くの温室効果ガスを排出する。

 「EUが温室効果ガスを運ぶ ―2050年への道筋」という名の新しい研究プロジェクトは、バイオ燃料の間接的影響を無視したとしても、バイオ燃料を使用しながら温室効果ガスの排出量を下げるためのコストは、炭素1トン当たり100ユーロから300ユーロになることを明らかにしている。現在の炭素クレジットのコスト(1トン当たり6.14ユーロ)を考えると、バイオ燃料を使用するということは、今まで通りガスを排出し続けて、その埋め合わせのために、他国の炭素クレジットを買う場合よりも、49倍も高いということだ。

 これはまったく、本末転倒である。というのは、炭素市場は、温室効果ガスの排出を抑えることにはまったく役立たないが、しかし一方で、投機的な金融市場を作り出し、地方や先住民の共同体に悪影響を及ぼすからだ。

 このプロジェクトの研究者たちは、バイオ燃料の費用対効果の数値を定義することは、不可能であるし、無益なことだと結論づけた。なぜなら、バイオ燃料の作用は、森林破壊や牧草地の荒廃において間接的に測定されるものであり、結局は、二酸化炭素をより多く排出する技術へと、変換されてしまうからだ。このことは、助成金の給付を想定されている理由とは、直接的には矛盾している。

 EU気候変動委員会から委任された研究者たちが行った研究のデータは、バイオ燃料の使用を義務づける目標に疑問を投げかける。しかし、この目標は、EUや米国では非常に注目を集めてきたため、助成金のことを別にしても、各産業にとって大きな刺激となっている。

 2007年、ヨーロッパは、2020年までに燃料使用の10%をバイオ燃料で賄う目標を定めた。2009年にはこの「バイオ燃料」という言葉を「再生可能エネルギー」へと変更した。しかし、確かなことは、専門家たちが、バイオ燃料の使用は全体の8.8%となり、そのうちの92%がバイオディーゼルでの使用となるだろう、と予測していることである。

 EUのバイオ燃料の影響に関する研究を行った、研究者のダビ・ラボルデ氏は、インターネット紙「ユーラクティブ」において、EU内外でのバイオ燃料政策は、実際には、環境とは別の理由によるものだ、と主張した。ラボルデ氏によると、これは、気候変動に対処することとは、何の関係もない理由によるものだ。これは、「大規模経営農家に助成金を給付するための新しい簡単な方法であり、また、バイオディーゼル製造業者の裏工作に応じるものである。そしてこれを、エネルギー安全保障と呼んでいる。中東からの石油の輸入に外貨をたくさん使わないため、エネルギー源の多様化を模索しているのだ。だから、この目標が効果的でなく、環境に配慮したものでなくとも、この目標を維持したがっているのだ」

 「ユーラクティブ」紙は、欧州議会のクロード・タームズ議員の発言も取り上げている。同議員が述べたところでは、バイオ燃料使用10%の目標は、環境に関する根拠とはほとんど関係がない。それよりも、ドイツの自動車産業や、フランスのアグリビジネス企業、その他の主にサトウキビのアグリビジネス多国籍企業からの執拗な要請が、はるかに大きく関係している。

 バイオ燃料産業は、ヨーロッパと米国の農業生産分野への、巨額の助成金なしでは持続できない。そして、ヨーロッパと米国は、ブラジルやアジア諸国における半奴隷的な労働力の使用と、自然生態系域への侵入に賛成しているということだ。この自然区域への侵入は、森林を破壊し、生態系を悪化させ、先住民や農民を彼らの土地から締め出すことになる。

 これらのヨーロッパにおける研究は、個別に研究活動を行う研究者たちや、世界銀行の専門家たちによって行われた、その他複数の研究と、同じ意見を持っている。それらの研究は、バイオ燃料の生産が、食料価格が高騰した主要な要因であり、土地や水、食べ物を求める争いをも悪化させたことを示している。それにもかかわらず、バイオ燃料の生産は引き続き奨励されている。メキシコでも、バイオエネルギー法から、気候変動に関する最新の法律まで、関連産業を潤す各種の法律によって、バイオ燃料の生産が保護されている。

 また、それと並行して、シェル、BP、エクソンなどの石油会社は、第二世代バイオ燃料の生産に投資している。第二世代バイオ燃料とは、合成生物学的に人工合成した微生物を用いて生産されるもので、効率が最も良いと、彼らが主張しているものである。これはまだ、証明されていない。しかし、環境にとって高いリスクを招くものであることは確かだ(あらゆる植物を分解する目的で作られた人工合成の微生物が、漏出することを想像してほしい)。また、土地とバイオ燃料の原料を買い占める新しい投機の波を意味することも明らかだ。

 データが明確に示していることは、アグリビジネス用のバイオ燃料を放棄し、これらの技術的な方法の代わりに、生産、エネルギー、消費の産業構造を根底から変えることが、緊急の課題だということだ。

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