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おいしくて体に悪いもの

ミゲランヘル・フェレール
Economia y Politica Hoy 2016/10/21

 過体重、肥満、糖尿病は、様々な要因が絡み合って起こる。その原因は、一般的には、座ったままほとんど動かない現代の生活様式や、過剰なカロリー摂取にあると言われている。従って、メキシコをはじめとする多くの国々で流行病のように蔓延するこれらの病をなくすためには、身体を使う活動を増やし、カロリー摂取を減らすことが、最も推奨される。

 しかし、活動量を増やすことは、簡単なことではない。定期的にスポーツをしている人は、ごく少数だ。スポーツ以外の活動量を増やすことも難しい。現代の生活では、身体を動かす必要がないからだ。

 また、有り余るほど豊富にある食料を、自らの意志で食べなくすることは、世界中の人々が証明しているとおり、ほとんど不可能だ。

 しかし、過体重、肥満、糖尿病の原因は、食べ過ぎだけではない。何を食べたかということも、関係してくる。

 炭水化物が多く含まれる食物や砂糖入りの清涼飲料水が、過体重、肥満、糖尿病の最も大きな原因であることは、良く知られている。

 そのため、メキシコの保険関連省庁は、清涼飲料水の消費を抑制するキャンペーンを、10年以上前に開始した。そして、この抑制キャンペーンのために、新しい法律が作られた。清涼飲料水1リットルに対し、1ペソの税金がかかるようになった。つまり、増税分は最終消費者が負担することになるとわかっていながら、商品を値上げしたのだ。

 「値上げすれば需要が減るはずだ」という論理の下に行われたこの政策は、経済学的には完璧だった。しかし、いつでも経済学の理論どおりに、事が運ぶとは限らない。ある商品を値上げしたにもかかわらず、需要が減らなかったという事例は、これまでにたくさんある。ガソリンをはじめとする燃料全般が、その典型的な例だ。

 清涼飲料水への課税が始まって10年近くが経過したが、消費量はごくわずかしか減少していない。世界保健機構の発表では、課税による消費量の減少は、2014年は6%、2015年は8%だった。

 この結果は、明らかに期待外れだ。しかし、課税推進派は、さらに100%の増税を行うための法案を提出した。現行の1リットルあたり1ペソの税金が、2ペソになる計算だ。この法案が可決されたら、消費量がめざましく減少するだろうか? おそらく、現在と同様、まったく期待外れの結果に終わるだろう。

 では、どうすればよいのだろうか? 砂糖入りの清涼飲料水の弊害について、さらに訴える? 弊害に関する情報は、すでにあふれている。しかし、情報が多すぎて悪いということはないだろう。清涼飲料水は、タバコやアルコール、薬物と同様に、楽しみを与えると同時に、害も与える。そして、私たちは、その手のものが好きだ。ここに、問題の本質がある。この欲望に打ち勝つための有効な手段は、おそらくないだろう。

 同じことは、食物の過剰摂取についても言える。私たちの日々の食事は、一皿の量が多く、明らかに食べ過ぎだ。どうやら現代人は、節度をもって理性的に飲食するという美点を、持ち合わせていないようだ。

 節度をもって理性的に。これが、苦しい病気を予防・克服するための、適切な方法だろう。しかし、そんなことができるだろうか? ああ、お腹いっぱい飲み食いすることの、なんと楽しいことか!

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