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すべての基本的食料品が多国籍企業の手に

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Ilustracion: Alan McDonald

ヘラルド・イグレシアス
Rel-UITA 2012/10/09

 ペプシコは、飲料部門で一歩リードし、他の関連事業へと事業を多様化した。現在のところ、業界トップのライバル社、コカ・コーラ・カンパニーよりも広範な事業展開を見せている。そして今、コカ・コーラ・カンパニーも目を覚まし、動き始めたようだ。

 コカ・コーラ・フェムサ(KOF)は、世界中のコカ・コーラ社商品の瓶詰め会社の中でも最大だ。そのホームページによると、KOFの株式の52%は、フォメント・エコノミコ・メヒカーノ(FEMSA)の所有である。それ以外の30.6%の株式はコカ・コーラ・カンパニーの系列会社の所有、残りの17.4%は一般株主の所有となっている。

 2003年、FEMSAはコロンビアのコカ・コーラ瓶詰め会社PANAMCOの株を100%取得し、多国籍企業の大きな輪に加わった。こうしてFEMSAはメキシコを飛び出し、今日では、ラテンアメリカの9か国に事業を展開している。

 2007年、メキシコの清涼飲料製造部門第2位のフゴス・デル・バジェを吸収合併し、炭酸以外の飲料部門での事業を開始した。

 このように、FEMSAと、そしてもちろん、コカ・コーラ・カンパニーは、企業の「水平統合」戦略を開始した。水平統合とは同業種の企業を買収または合併することで、商品範囲の拡大と市場における競争力強化を目的としている。

パナマからメキシコへ

 昨年、FEMSAは、乳製品メーカーのエストレージャ・アスルの親会社、インドゥストゥリアス・ラクテアス・グループを取得して酪農産業部門に参入し、一層大きな賭けに打って出た。インドゥストゥリアス・ラクテアス・グループは、パナマで最大の酪農グループ企業で、2010年の年商は1億4090万ドルだった。

 また、数週間前には、FEMSAがメキシコのサンタ・クララ社を買収し、再びニュースになった。サンタ・クララ社は、一日に20万リットルの牛乳を加工しており、その75%は液体の飲用牛乳だ。

 メキシコは、世界第8位の牛乳消費国で、年間売上げは70億ドルにのぼる。その市場で、現在は少数の企業だけが競争している。内訳は、メキシコで毎日消費される牛乳10杯のうち、5杯はララ社の牛乳、3杯はアルプラ社、残りの2杯が他社の牛乳となっている。

 メキシコ牧畜業者・酪農家協会(ANGLAC)のデータによると、メキシコでは、毎年107億リットルの牛乳が生産され、さらに輸入(主に米国からの輸入で、米国の生産者は補助金を受けている)は、国内消費量の31%近くにのぼる。また、牛乳の年間需要は135億リットルで、粉乳輸入量は2011年だけで22万6779トンに達している。

北米自由貿易協定と酪農

 メキシコの酪農生産は、他の国々と同様、赤字操業だ。メキシコ乳製品生産者消費者戦線のアルバロ・ゴンサーレス代表は、「酪農生産者が政府や企業に生産物を売っても、十分な収入が得られない。最も良い場合で1リットルあたり5.62ペソ(約34.8円)だが、生産には6.30ペソ(約39円)かかっている」と語った。

 メキシコでは干ばつが長引いており、家畜に食べさせる飼料の大部分を輸入しなければならない。飼料を購入する費用は、全経費の70%にもなる。

 APALグループ(酪農業者)のアルマード・パレデス・アロージョ・ロサ社長は、「以前は、飼料のトウモロコシ1トンが3000ペソ(約18,400円)だったが、ここ3年で200%値上がりした」と述べた。

 状況は非常に深刻かつ危機的で、メキシコの20万の酪農生産者の4分の1は、2012年末までに閉鎖すると見られている。つまり、干ばつの結果、一日に50万から100万リットルの牛乳の生産が、停止するということだ。

この状況はどこから来たか?

 前出のゴンサーレス代表は、「メキシコの食糧危機は、18年前、北米自由貿易協定(NAFTA)が調印されたときから始まった。なぜなら、NAFTAは酪農産業に、規制緩和期間14年間で40億ドルもの関税を免除する特権を与え、優遇してきたからだ。さらに、原産国で補助金を受けた牛乳の輸入も開始された」と考えている。

 また、ANGLACのビセンテ・ゴメス・コボ会長は、「メキシコは、NAFTAのせいで、今や世界最大の酪農製品輸入国になってしまった」と指摘している。

 最近FEMSAと合併したサンタ・クララに話を戻すと、牛乳の生産量が一日20万リットルというのは、ライバル社を心配させるレベルの生産量ではない。しかし、FEMSAが他の企業を合併する力を持っていることは、ライバル社を心配させている。

 また、FEMSAが、米国から乳製品を輸入するということもあり得る。国税庁のデータによると、2012年前半の乳製品輸入合計の72.90%は、米国からの輸入だった。FEMSAが米国から乳製品を輸入すれば、オクソ1万店舗に乳製品を補充することができる。オクソは、FEMSAが所有するメキシコ最大のコンビニエンスストア・チェーン(面積500平方メートル以下、営業時間18時間以上)だ。従って、これも時間の問題だ。

 そのような現状を見ると、多国籍企業が、市場の飽和に対応するため、市場内の他のセグメントを探しており、少しずつ、すべてを手にしようとしていることがわかる。

 すべての基本的食料品が、たったひとつの多国籍企業の手に握られてしまうのは、もう間もなくのようだ。

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