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「食べたら帰ってくれ」

コロンビアの「セマーナ」誌が掲載した記事より、メキシコの有名な失態「食べたら帰ってくれ」のエピソード部分を抜粋して紹介します。

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写真:メキシコのフォックス大統領(左)は、ジョージ・W・ブッシュに不快感を与えないために、キューバのフィデル・カストロ(右)に電話し、会議に出席しないよう依頼した。

2012/03/03 Semana

 2002年、メキシコのモンテレイでの国連開発資金会議の2日前に、当時のメキシコ大統領のビセンテ・フォックスは、キューバのフィデル・カストロの手紙を受け取った。手紙は、カストロが招待を受けることを伝えていた。この招待については、カストロが辞退するだろうと世界中が思っていた。フォックス大統領は、キューバ革命の指導者の出席について、米国の立場を心配し、カストロに電話をかけ、出席を断念してもらおうとした。この電話がかかってくることを予想していたカストロは通話を録音し、20分間にわたってフォックスをからかった。さらにカストロは、その通話をオフレコにすることを約束していたにもかかわらず、その後、通話を公表し、そのため、フォックスのこの恥ずべき通話の内容は、世界中に広まった。


フォックス:もしもし、フィデル? どうだい?

カストロ:もしもし、大統領殿、調子はいかがですか?

フォックス:まず初めに、この会話をオフレコにしてくれるように、頼みたいんだ。ここだけの話ってことで、いいか?

カストロ:わかりました。(…)

フォックス:だけど、フィデル、僕は君と、何より友達として話してるんだよ。

カストロ:もし友達として話されるのなら、出席するなとは、言わないでください。

フォックス:(笑)いや、そのことだけどね、話し合いをさせてくれよ。まず、君の意見は?

カストロ:大統領の意見を伺います。ですが、おっしゃることは、もうわかっています。どんなことでも協力するつもりですが、それだけはできません。

フォックス:だけど実際、こんなぎりぎりになって知らせてくるなんて、あまり友達のすることとは言えないじゃないか。こちらも慌てるし、問題だらけだよ。例えば君の警護の問題とか。

カストロ:いや、私は何も心配していません。ブッシュ氏のように、警護に800人もいりませんから。

フォックス:そうか、でも僕を友達として信用して、もう少し早く出席の意向を知らせてくれたら良かったじゃないか。そうしたら、お互い、ずっと良い結果になっていたと思うがね。

カストロ:もし私に出席するなとおっしゃるなら、世界中で大騒ぎになることを、ご存じのはずです。

フォックス:世界中で騒ぎを起こすなんて、そんな必要がどこにある? 友達として話しているんだから。

カストロ:大統領殿、貴方は開催国の大統領です。もし私に出席を禁じたら、私の方も、その時に発表するつもりだった演説を、明日発表せざるを得なくなります。

フォックス:いや、それはだめだ。君には出席する権利があるよ。だけど、そうだな、とにかく君は来るつもりだってことだね。じゃ、ひとつ提案がある。

カストロ:なんでしょうか。示談の内容を伺います。

フォックス:木曜日の午前中に来るというのはどうだ? 君の演説は午後1時だから。

カストロ:ご心配なく、おっしゃるとおりにご協力します。お邪魔はしません。わざわざ昼食に招待してくださるには及びません。

フォックス:そんなんじゃないんだ。その日、君を朝食に招待して、さらに席も、僕の隣に座ってもらうことができる。だけど、食べ終わったら、帰ってくれ。

カストロ:帰るって、キューバへですか、それともホテルへ?

フォックス:キューバへ。

カストロ:なるほど。

フォックス:フィデル、もう一つ、頼みがあるんだが?

カストロ:どうぞ、何をお手伝いしましょう?

フォックス:つまり、基本的に、米国やブッシュ大統領を侮辱するようなことを言わないでほしい。

カストロ:大統領殿、私はもう43年間も政治に関わっています。適切な上品さと優雅さで包んで真実を話すことを、心得ています。席上で私が爆弾発言をするなどと、心配なさる必要はありません。

フォックス:感謝するよ。そうしたら、君は木曜日に来て、それ以降は、こちらの自由にさせてくれるってことで、いいね? 金曜日が難しいことにならないように、君に頼んでるんだ。

カストロ:すべてわかりました。詳しいことは、今は話さないことにしましょう。ご協力します。大統領殿の命令に従って、食べたら帰ります。


 この会話の後、フィデル・カストロは、打ち合わせ通り演説をし、食事をし、帰った。キューバに帰国後、カストロはこの会話の録音を公表したため、メキシコの大統領は、笑いものになった。

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