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CIAと気候管理

シルビア・リベイロ*
ALAI, America Latina en Movimiento 2013/07/30

 米国の中央情報局(CIA)は、地球工学(気候の操作)についての研究に、資金を供給している。研究開始時の予算は63万ドル、21カ月継続する予定である。研究を行っているのは、米国科学アカデミーで、米国の航空宇宙局と海洋大気局も参加している(雑誌マザー・ジョーンズ 2013年07月17日)。

 CIAの気候に対する関心は新しくはないが、今回の研究への参加は重要である。というのは、気候操作の可能性は、戦争に影響するためであり、また、地球工学の技術の使用については、国連における一時的な停止の合意があるにもかかわらず、米国では、地球工学の推進者たちが、その技術の実験を進めるために、圧力をかけているためである。

 この研究プロジェクトは、太陽光の放射の操作や大気からの二酸化炭素の除去のような、地球工学の様々なテーマについて分析する。また、降雨や干ばつを発生させたり、ハリケーンを管理するために、人工降雨および大気の状態を操作する様々な方式の影響についても研究する。公式の文書によると、この研究では、環境や経済、国の安全保障の観点から、これらの技術の影響についての、専門的な評価が行われるであろう。

 この環境、経済、安全保障は、CIAが憂慮している問題である。CIAは、それ以前のいくつかの文書においても、気候変動と気候管理を、戦略的地政学上や国家安全保障上の重要な要素と位置付けている。それにもかかわらず、共和党議員たちは、CIAの気候変動部の閉鎖に賛成票を投じた。CIAによれば、気候変動部の閉鎖が、このプロジェクトに資金を供給する動機となった。閉鎖の理由については、ずっと以前までさかのぼることができるだろう。というのは、気候を管理することは、米国では、ずっと以前からの軍事プロジェクトだからであり、すでにベトナム戦争時代に、ベトナム人の農作物と道路を水浸しにするために、数か月継続して雨を降らせるという実験を行っている。同様に、米国の空軍も、1996年に、「戦力増強手段としての気候 ―2025年における気候の管理所有」と題した文書を発表した。彼らの意図は、このタイトルに明白に表れている。

 こうした利益は、少数だが影響力のある、「北」の諸国の気候学者や科学者らの利益と一致している。彼らが地球工学の必要性を主張する理由は、温室効果ガスの排出量は、すぐには減少させることができない(まるで彼らの国は、そのための重要な対策を取らなければならない国ではないかのようである)から、または、有名な地球工学の促進者、デビッド・キースが述べたように、安くて簡単な方法だから(MITテクノロジー・レビュー 2013年2月8日)、というものである。

 確かに、資源の過剰消費や、石油を基盤とした工業化で、気候変動を引き起こした国々にとっては、安くて簡単だろう。なぜなら、温室効果ガスの排出量を実際に減らすかわりに、地球を引き続き暖めるかもしれないからである。その上、すべての人のものである気候を操作する新しい技術を使って、その技術を支配する人々の経済や戦争における利益に都合がいいように、気温を上げ下げして、うま味のあるビジネスができるかもしれないからである。

 太陽光放射の操作の分野では、目標は、地球に届く太陽光の量を減少させることである。例えば、巨大な人工の火山雲を作り、そこに硫黄粒子を注入する方法である。それ以外にも、太陽光を反射するために、雲を白くしたり、宇宙空間に莫大な数の鏡を据え付けたりする提案や、最も新しいものでは、赤道上を飛行する航空機から、雲と混ざるように硫酸をまくという、デビッド・キースの提案がある。二酸化炭素の除去については、大気中の二酸化炭素を吸収する装置または人工樹木のような、他の技術も提案されている(確実なことは、吸収した二酸化炭素を、その後永久に保管しておく場所を、彼らはまだ思いついていない)。最もよく知られた分野は、海洋肥沃化である。それは、二酸化炭素を吸収して海底へ運び去るプランクトンを繁殖させるため、海に鉄や尿素のナノ微粒子を流し込む、という方法である。

 地球工学の技術は、海洋肥沃化のようないくつかの例外を除けば、単なる理論上のものである。その海洋肥沃化の合法または違法に行われた実験については、二酸化炭素除去という本来の目的には役に立たない―二酸化炭素が海底にとどまらない―ということのほかに、海洋食物連鎖の急激な断絶、海中の各層における酸素欠乏症、有毒海藻類の発生など、環境に甚大な影響を及ぼす可能性があることが知られている。

 地球工学は、地球環境に影響を及ぼすために、あまり知られていないが非常に活発なエコシステムや、地球上のすべての生命と相互に作用しあっている地球のエコシステムを断ち切って、巨大な規模で実施されなければならない。従って、試験段階というものは存在しない。小規模で行う実験は、実験の行われた地区や地域で深刻な悪影響を及ぼす可能性こそあれ、全地球の気候に関わる作用を証明するものではない。そして、もし大規模に実験を行えば、それはもう実験ではなく、この技術を地球上に展開することであり、取り返しのつかないことなのである。

 例えば、人工の火山雲は、その有害な微粒子が地上に落ちてくるまでは、取り除くことができない。さらに、この技術は、オゾン層の損傷と海の酸性化という、地球の最も深刻な二つの問題を、悪化させる可能性がある。もし現実に、「北」に降り注ぐ太陽光の量を減少させることができたとしても、そのために、アフリカで極端な干ばつが起こり、アジアの季節風は遮断され、20億人の食糧の源を危険にさらすことになるだろう。

 もしもCIAが地球の温度の上下を設定することができるとしたら、と想像してみてほしい。地球工学は、それが気候に与える影響からしても、また、他国に対して敵対的に利用されるかもしれないことからしても、あまりにも危険なものであり、従って、唯一の賢明な措置は、その利用を国際的に禁止することである。


* シルビア・リベイロは、ETCグループの研究者

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