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飢餓と貧困とその本質的な原因

La Jornada 2013/02/20

 飢餓対策が、政府のアジェンダにおいても、飢餓に対応するための政府プログラム「全国飢餓撲滅運動」を開始するにあたっても、最優先事項のひとつになった。そのため、メキシコ国内で、この問題の現状や大本の原因、様々な側面についての理解を促すような、広範で多様な議論が行われることが、妥当なことでもあり、また必要なことにもなっている。それらを理解することで、この問題を改善するための様々な社会政策が適切であるかどうかを、識別することができる。

 この観点から見ると、このテーマについての一連の報道記事を掲載した本日付の本紙1ページ目で公表している数字から、次のようなことが明らかになる。すなわち、社会発展政策評価会議のデータによると、メキシコの国民のうち2200万人(国民の19.4%)は、最低限の食料を買うために必要な所得を得ていないのであるが、前述の政府プログラムの対象となるのは、そのうちのわずか3分の1(740万人)のみだということである。

 従って、「全国飢餓撲滅運動」が正しく立派な目標を掲げていることは確かではあるが、しかし、その政策に設計や構想上の欠陥があることは、否定できない。というのは、この政策が、食料を入手できない貧困状態にある人々の大部分を、初めから除外する方針の政策だからだ。そのようないい加減さから、必然的に疑念が生じ、我々はこう自問せざるを得ない。この欠陥は、政府の社会政策の担当者たちによる単なる統計学的な計算ミス(もしそうなら、非常に情けないことであるが)や、怠慢や独断のせいなのだろうか。それとも、野党がここ数日主張しているように、政治と選挙の尺度からプログラムの受益者を選別するという、意図的な計画によるものなのだろうか。

 さらに、飢餓、貧困、差別を撲滅するための政府の努力が、明らかに不十分であることから、現代メキシコにおけるこれらの社会現象は、偶発的なものではなく、現在の政治経済モデルと不可分のものであることを、思い出す必要が出てくる。

 実際、飢餓や貧困層の存在は、新自由主義政策(賃金の抑制、市場の無差別な開放、公共の財産の民営化、富の再分配機能の解体)を適用したことで、単に結果的に生じたことではない。新自由主義が、巨大財閥企業の中に賃下げの圧力を生じさせ、コストを減少させ、大量の労働者予備軍を発生させるという観点からしても、飢餓や貧困は、新自由主義というシステムの機能にとっては、基本的な前提でもあるのだ。

 その上、貧困層の存在が、メキシコ国内における制御不能状態の発生や、大小の犯罪の勢力拡大の原因であるにもかかわらず、制度的革命党(PRI)と国民行動党(PAN)の新自由主義政権は、貧困層を票田として利用してきた。それ故、代々の連邦、州、基礎行政区の各政権は、自分たちが権力の座に居続けるために、各種の社会福祉プログラムを創設した。

 このようにして、カルロス・サリーナス政権時代に「連帯プログラム」が作り出され、宣伝や選挙、国民を取り込んでコントロールするために利用された。同じことが、後継のエルネスト・セディージョや、PANのビセンテ・フォックス政権、フェリーペ・カルデロン政権によって再現された。PAN政権下では、社会開発省(SEDESOL)とその各種プログラムが、与党の選挙基盤として利用された。

 貧困、飢餓、栄養不良に対する政府の政策が、現実に効果的で実現可能なものになるためには、方向転換を行わなければならない。つまり、権力者たちの蓄財の欲望を満足させる方向ではなく、国民の財産や国民の権利を尊重する方向へ進むために、経済政策と、政治体制の考え方そのものを、方向転換させることが必要なのだ。

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