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米国によるメキシコへの干渉と人権

La Jornada 2015/04/25

米国のマリノウスキー国務次官補(民主主義・人権・労働担当)は、メキシコ訪問に際し、「メキシコは、トラトラヤやアジョチナパのような事例があったことから、とりわけ国際社会の注意を引いている。人権侵害や汚職、失踪、誘拐、拷問の加害者が処罰されないメキシコの慣習を終わらせるために、今年6月の選挙が、何らかのプラスの影響をもたらすことを期待している」と述べた。

マリノウスキー国務次官補のコメントは、二つの点において、あまりにも不適切だ。一つ目は、このコメントが内政干渉である点だ。いかなる国も、他国を裁くことはできず、人権問題などの他国の国内問題に、承認・不承認の判断を下すことはできないはずだ。二つ目は、メキシコにおける基本的人権の尊重について、米国が意見することが、とてつもなくナンセンスである点だ。というのは、米国の人権問題の歴史は、行き過ぎと不法行為のオンパレードだからだ。なかでも、アブグレイブ刑務所やグアンタナモの収容所の存在、CIAによるテロ容疑者の極秘移送、アフガニスタンやイラクで行われた人類に対する犯罪行為は有名だ。また、自国民の自由と基本的人権を法の名のもとに制限したり、警察官が武器を持たないアフリカ系・ヒスパニック系市民を殺害してきた長い歴史についても、周知のことだ。

確かに、メキシコにおける基本的人権は、悲惨な状況にあり、さらに悪化しつつある。公職にある人々は、市民の権利を蹂躙しても、大抵の場合は処罰を受けることはない。また、拷問や裁判なしの処刑、不当な拘留が継続的に行われていることも明らかだ。メキシコ政府は拷問を否定しているが、複数の国際機関は拷問が事実であることを指摘している。また、不当な拘留について、メキシコの最高裁判所は、近ごろ、「裁判所は、警察の要請により、容疑者を拘留することができる」と規定した刑法133条を合憲とする決定を下した。

このような逆行現象は、メキシコ現政権の権威主義的傾向に原因があるというより、むしろ大部分は、米国の歴代政権がメキシコ歴代政権に押し付けてきた治安・経済政策に原因がある。また、米国が、麻薬組織やテロとの戦いに介入するためにメキシコに圧力をかけ、ホワイトハウスの指示を押しつけたためでもある。そのようなホワイトハウスの指示は、多くの場合、メキシコの国民の自由と基本的人権を侵害し、メキシコの主権を侵害してきた。このような治安・経済政策の押しつけや麻薬戦争への介入は、社会的・政治的問題を処罰・警察・軍事力で解決しようという米国政府の意図を表している。

従って、メキシコ政府は、メキシコの人権問題の裁き手を自任する米国のもくろみを拒絶しなければならない。メキシコにおける人権のための戦いは、まったく終わりが見えず、現状は悲惨だ。しかし、米国は、人権問題で物申すことができるほど道徳的ではなく、そのような権利もない。

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