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メキシコのお菓子市場

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foto:Carlos Mendoza Lima

アドリアナ・S.
Mexico Desconocido No.213

 「アレグリアース! ムエガノース! チャラムスカス!」

 古い大衆映画やメキシコ市の街頭のお菓子屋さん(ドゥルセリア)の売り声、みなさん思い出しますよね? この懐かしい売り声でよだれが出そうになって、おいしいお菓子をちょっと食べたくなりませんか?

 ドゥルセリアは、メキシコに古くからあるものですが、メキシコ的であると同時にスペイン的でもあります。私たちメキシコ人は、大のお菓子好きです。だから、メキシコ市にも他の都市にも、お菓子市場があるのは自然なことなのです。

 メキシコ市のお菓子市場は、歴史地区の北のはずれ、シルクンバラシオン通り沿いのメルセー市場の横にあります。そこでは、あらゆる種類の甘いお菓子、特にメキシコのお菓子に出会うことができます。

 この市場では、当初は151店舗のドゥルセリアが、12本の通路に並んでいましたが、時と共に周辺に広がっていきました。都市にあるすべての公設市場と同様、ここにも、中央通路にグアダルーぺの聖母像があり、市場とそこで働く人々を守っています。

 以前は、ぱっと目を引くお菓子が、木の机に並べられる分だけ売られていましたが、顧客の需要の増加に応じて少しずつ品数が増えていきました。そこで、店舗の隅々や狭い空間まで利用されるようになり、現在のようにたくさんの種類の商品を売るようになったのです。

 他の商売と同様、ドゥルセリアも、家族代々受け継がれる伝統的なもので、ひとつの家族がひとつの店舗を管理するようになっています。父親は息子に店を譲り、息子は孫に譲るというように、受け継がれていくのです。別の店舗の店主たちも、親戚同士ということが珍しくありません。

 市内のいたる所にたくさんある食料品店にとっては、お菓子市場は商品補給の場で、小売りするお菓子を仕入れるために、ここにやってきます。箱詰めされたお菓子は、製造業者から市場へ、商品の回転の速さ次第で毎週、あるいは15日ごとに納品されます。各ドゥルセリアでは、色々なパレータ(棒つきキャンディー)、アメ、チョコレート、ピーナッツ菓子、ミゲリートなど、ありとあらゆるメーカーのお菓子に出会うことができます。伝統的なメキシコのお菓子も、専門の製造業者から納品されますが、新鮮なものを売る必要があるため、こちらは非常に頻繁に納品されます。砂糖でコーティングした果物のみ、ドゥルセリアの主人が店舗内で作ります。

 伝統的なお菓子は、メキシコ人の想像力や創造力のたまものです。なぜなら、これらのお菓子は、果実、木の実、種、サボテンなど、ありとあらゆる種類の食材をベースにして作られていて、メキシコの豊かな自然を利用する方法の具体例となっているからです。こうして私たちは、アマランサスの種で作ったおいしいアレグリア、カボチャの種が入ったカラフルなペピトリア、クルミかピーナッツでできた甘いパランケータ、甘いミルク味のマカロン、ココナッツ菓子のコカーダ、色々なミルク菓子、カボチャの種のファッジ「ハモンシージョ」、サボテンのお菓子アシトロン、唐辛子風味や塩味のタマリンド、アメを引き延ばしたチャラムスカ、歯が折れてしまいそうな硬いキャンディー「トロンパーダ」、砂糖コーティングしたカボチャ、ひょうたん、いちじく、パイナップル、オレンジ、サボテンの実、レモンのココナッツ詰めなどを味わうことができるのです。それに、パリパリしたビスケット「モレリアーナ」、棒つきキャンディー「ピルリ」、様々な味のグミ、キャラメルを挟んだクレープ「オブレア」、甘いシュガーアーモンド「ペラディージャ」、様々な色と大きさと形のマシュマロも忘れてはいけません。

 お菓子市場の周辺には、市場に属していないたくさんのドゥルセリアがあります。それらのドゥルセリアでは、伝統的なメキシコのお菓子のほかに、ピーナッツ、アーモンド、ピスタチオ、シナモンスティック、シナモンパウダーなどを使用した輸入品のお菓子や、手作りの豚の皮の唐揚(チチャロン)も買うことができます。

 お菓子市場で働く人々は、お菓子に対して大いなる愛情を持っていて、すばらしく仕事熱心なうえ、善良で働きものです。また、市場の店舗自体がまるで芸術作品で、買い物客の目を楽しませるように並べられたお菓子が食欲をそそります。商品は、使える空間の端の端まで利用しつつ、他の商品を落とさずに目当ての商品を取り出せるように並べられていなければなりません。

 だからこそ、ドゥルセリアの店主たちは、客がお菓子をいじくりまわすことを嫌がります。そこで、「買わないなら、触るな」の伝統が生まれました。

 お菓子市場では、スーパーマーケットのお菓子コーナーでは売られていないお菓子を見つけることができます。価格は高くなく、どの店舗も違いはほとんどありません。たくさん買えば値引きしてもらえることもあります。

 クリスマス近くになると、お菓子市場の周辺は、ほとんど歩けないほど混み合います。通路がとても狭い上に、ものすごい人出だからです。

 お菓子市場は、メキシコ人にとっても観光客にとっても、見逃せない場所です。大げさに言えば市場がすぐそこの角にあると言ってもいいメキシコ市の人なら、なおさらです。お勧めの場所ですし、きっと後悔はしませんよ。なぜなら、お菓子市場でメキシコの歴史と伝統に少し近づき、所狭しと並べられた商品のバリエーションや美しさを堪能し、そこで働く人々の親切に触れ、幸せな子供時代を楽しく思い出させるような、大好きなお菓子に出会い、あなたはきっと、楽しく満ち足りた気分で、市場を後にするからです。

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