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富裕国の病

マヌエル・グスマン・M
El Economista 2013/03/19

 すでに何年も前から、外国人投資家たちは、メキシコの有望な諸要因を察知し、注目してきた。それが、メキシコへの資金移動が急激に増加した理由だ。実際、メキシコが現在直面している課題は、資本の流入を管理することである。

 メキシコへの投資に食指が動く要因は様々だ。例えば、安定したマクロ経済や、成長の可能性の高さなどであるが、それというのも、今日、大部分の先進諸国が停滞と不況に苦しみ、新興諸国の成長は減速しているからだ。

 メキシコ中央銀行は、メキシコ経済の構造上の特徴を、ほかにも指摘した。例えば、米国に近いこと、人口構成が若く、教育が急速に普及していること、経済の規模が大きく多様であるために、工業製品の輸出大国になったこと、貿易が自由化されていること、資本移動に制限がないこと、為替市場の奥行きが深く柔軟であること、などである。

 このように、メキシコは世界から、強く、中国に対する大きな競争力として成長する見込みがあり、メキシコを先進国に一挙に押し上げるかもしれない構造改革が進展している国であると見られている。

 しかし、資本の大量流入を招いたこの堅固さの名声は、大幅かつ急激なペソ高の原因となる可能性があり、悪い結果になるかもしれない。これは新しい現象ではなく、経済理論において広範に研究されてきたことだ。

 オランダ病、またはオランダ症候群は、まさに資本の流入が大幅に増加することが原因で生じる悪影響のことを指している。この現象は、1960年代、大きな天然ガス鉱床が発見された結果、オランダが急激に豊かになった時期から見られるようになった。

 天然ガスの輸出が増加し、資本が大量に流入して、オランダの通貨フロリンの大幅な高騰を招いた。また同時に、石油以外のオランダの輸出競争力に悪影響を与えた。

 この現象が公の場で初めて取り上げられたのは、1977年、英国の「エコノミスト」誌においてであった。「エコノミスト」誌では、ガスの輸出による収入が、為替レートや経済活動全体に、非常に有害な影響を与えていると述べられていた。

 本来オランダ病は、天然資源の発見と関連づけられていたが、後の研究では、外貨の流出が著しく増加することが、為替レートに及ぼすであろう影響について、分析されるようになった。

 様々な研究の結果、ある国の輸出が減少した場合、その要因は様々であるが、どのような場合においても、為替レートはその一要因であり、しかし、必ずしも最も重要な要因ではないという点で一致した。

 ブラジルなど、資本の大量流入で有利なように見えた新興国の中には、外国資本に課税する政策によって、オランダ病に対処することを決めた国もある。ブラジルは、この課税によって、レアルの過大評価と輸出への悪影響を回避している。

 このように、外貨獲得競争や、多くの新興国が定めたような競争のための平価切下げは、オランダ病の結果であるようだ。メキシコは現在、オランダ病に苦しんでいるが、しかしメキシコには、課税によって資本流入を抑制する傾向は見られなかった。そのため、ここ最近の低金利政策は、オランダ病の弊害を軽減することを模索しているように思われていた。

 しかし、金利の引き下げには限度があり、メキシコ中央銀行は低金利政策を継続するつもりはないとの立場を明らかにした。

 このことは、むしろ今後ペソ高に直面する可能性を示しているように思われる。もしメキシコの経済的な見通しのために金利が上がり続けるのだとすれば、それはなおさらである。

 新富裕国の病気は、オランダ病だろうか?


マヌエル・グスマン・Mはファイナンス・グループ「ベ・ポル・マス」のポートフォリオ分析管理と経済戦略の最高責任者。

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