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キューバの奇抜な名前ブームが下火に

1959年、キューバでは、独自に考え出された名前や珍しい名前が、急激に増え始めました。キューバが国と宗教の分離を宣言し、教会が影響力を失ったため、もう聖人暦にある名前をつける必要がなくなったのです。

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写真:名前を書いて見せるキューバの小学校の生徒たち。大部分は非常に奇抜な名前だ。(Andrea Rodriguez/AP)

El Tiempo 2014/07/05

 ヤニッセ・ガルシアさんは、30年間ずっと、自分の名前の発音とつづりを説明してきました。そのため、3年前に第一子が生まれたとき、その子がゆくゆく名前を間違われたり、わずらわしい思いをしたりすることがないようにしたいと思いました。

 ガルシアさんは、「オリビアという名前が気に入ったのは、難しい名前ではなく、スペイン語でも英語でも通用するし、書き間違えられることもないからです」と、AP通信に語りました。ガルシアさんは現在32歳、外国語の学士号を持っています。

Y世代

 ガルシアさんは、キューバで俗に「Y世代」と呼ばれる世代の一人です。Y世代のキューバ人の数は非常に多く、彼らの親たちは、1960年代以降、聖人暦から名前をとったり、古くからある名前をつけたりする伝統を破った世代でした。Y世代の親たちは、ユーリやイェフゲニーなど、Yで始まるロシアの名前に着想を得たものから、スペイン語の代名詞の「私(ヨ)」、「きみ(トゥ)」、「彼(エル)」をひとつにして作ったヨトゥエルのような奇抜な名前まで、様々な名前を作り出しました。

 しかし、キューバ人は、ここ数年、ヨハイラ、イェイスケル、ヨレイシー、ユニエスキー、ヤディニス、イルカ、イリアネス、ヨネルシー、ユスレイビス、ヨラディ、ヨマリー、ユデイシーなどYで始まる名前を熱狂的に支持するのをやめ、アレハンドロやダニエラなどのシンプルな名前に戻ってきているようです。

 マイアミ・デイド大学の社会言語学者カルロス・パス・ペレスさんは、「Yで始まる名前は、本当に熱狂的なブームでした。ソビエトの影響で、ユーリという名前が最初にはやり出したのだと思います。それは、ありきたりなペドロやラウルとは異なる名前をつけたいという、スノビズム的なものでした」と述べています。

 この現象は非常な広がりを見せたため、Yで始まる名前の人は、ある時代の子供たちだと認識されるまでになっています。その一人、反体制派のヨアニ・サンチェスさんは、2007年、政府を痛烈に批判するブログを開設し、「ジェネレーションY」と名付けました。

 一方、同じくY世代のヨアンドリー・フォンターナさんは、ヨアニさんのブログとは正反対の立場をとるブログを開設し、政府を擁護しています。

 この分野に詳しい人たちは、奇抜な名前は、1950年代のキューバでは、あまり一般的ではなかったけれども、あることはあったと述べています。

 元研究者で作家の米国系キューバ人、ウバ・デアラゴンさん(69歳)は、「母の友人に、オリデーという名前の人がいます」と、AP通信に語りました。その名前は、聖人暦から取ったものですが、オリデーさんの両親が、英語のホリデーをスペイン語読みして、オリデーになったそうです。

 デアラゴンさん自身の名前も、彼女の祖父ウバルドさんの名前にちなんだ珍しい名前です。しかし、珍しい名前をつける現象は、1950年代のキューバでは、その後のブームほど盛んではなかった、とデアラゴンさんは語っています。

 デアラゴンさんは、「以前は、カレンダーには聖人の名前が記されていて、子供に聖人の名前をつけたり、両親の名前をつけたりしていました」と言います。

 しかし、1959年の革命勝利後、独自に作った珍しい名前が急増しました。

 デアラゴンさんは、キューバが宗教の分離を宣言し、カトリック教会が影響力を失った革命後の時代を暗に指して、「大勢の人が子供に洗礼を受けさせることをやめたため、聖人暦にある名前をとる必要がなくなったのです」と指摘しました。

 そこで、アニセイやビシオアンドリーのようなわかりにくい名前がたくさんつけられ、もともと存在したけれども、風潮に合うようなつづりを用いたジセル(Yisel)など、例のYのつく名前が流行するようになりました。

 また、チェ・ゲバラやスターリン、レーニンの思想が入ってくると、キューバの政策と外交関係も、名前に影響を与えるようになりました。ハノイやナイロビなど、同盟国の地名も名前になりました。

 珍しい名前には、ダイメル(ダニエルとメルセデス)のように二つ以上の言葉を組み合わせたものや、特に由来はなく、単に独創的な名前を作り出したものがありました。また、昔からある名前をひっくり返して作ったアイラム(Mariaを逆から読んだ名前)のような名前も多くつけられました。

 キューバでブームになった珍しい名前の中には、最近、世界に知れ渡ったものもあります。例えば、非常に有名なキューバ人ダンサーのビエントセイ・バルデス、野球好きの米国人によく知られているアロルディス・チャップマンやヨエニス・セスペデスなどです。

ブーム

 キューバには、新生児の名前についての公式データや、他の国々のような人気名前ランキング、社会学的な調査などはありませんが、ここ数年、キューバ人の名前の好みが変化していることは明らかです。

 AP通信が、ハバナのある高校で40人の生徒を対象に行った非公式の調査では、ルスニオビス、ユネイシー、アリアニス、ディアナエベルなどの珍しい名前の生徒の数は、12人でした。一方、小学校一年生20人では、ライコルとネディアムの二人だけでした。

 ここ数か月、キューバのマスコミも、規制の必要性を指摘したり、もっとよく考えて子供の名前をつけるように親たちに勧めたりするようになっています。キューバ文学言語学研究所の研究員、アウロラ・カマチョさんは、「キューバにおけるこの現象は度を越しており、制御できなくなってしまいました。しかし、名前というものは、国のイメージでもあり、その後ろには、ひとりの人間が存在しているのです」と、AP通信に語り、法律でもっと明確に規制する必要があると主張しました。しかし、珍しい名前は、キューバだけに限ったことではありません。

 ベネズエラ政府は、2007年、親たちが子供に「滑稽な名前や奇妙な名前、発音が困難な名前」をつけることを防ぐ法案を可決しようとしました。また、ドミニカ共和国でも、2009年に同様のことがありました。

 ベネズエラでもドミニカでも、法案は可決されませんでした。最近では、メキシコのソノーラ州が、「フェイスブック」「ランボー」「シルクンシシオン(割礼の意味)」など、一度でも出生登録されたことがある奇抜な名前60個以上を禁止しました。

 しかし、キューバでは、今でも独創的な名前をつけることはありますが、伝統的な名前も復活してきています。例えば、冒頭のガルシアさんの娘オリビアちゃんのいとこの名前は、エルネスト、ガブリエラ、カルロス、クリスティアンです。言語学者のカルロス・パス・ペレスさんは、「ブームが去ったのだと思います」と説明しました。

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