e-MEXICO

ホーム > 歴史・古代文明 > トウモロコシ畑「ミルパ」と人口の浮島「チナンパ」

トウモロコシ畑「ミルパ」と人口の浮島「チナンパ」

foto
写真:トウモロコシ畑「ミルパ」 ( Corresponsales del Anahuac )

Arqueologia Mexicana

 メキシコ人は、外国のトウモロコシ畑の写真を見ると、あまりの美しさに驚きます。形や大きさがきれいにそろったトウモロコシが整然と植えられ、他の植物も雑草も見当たらないからです。でも、それをうらやむ必要はありません。なぜなら、メキシコのトウモロコシ畑は、地球にやさしく安全で、生産性もとても高いからです。このメキシコのトウモロコシ畑は、「ミルパ」と呼ばれています。

 ミルパでの栽培方法は、三次元的です。トウモロコシの茎が垂直方向の軸となり、そこに、フリホール豆のツルが絡まります。大きな特徴は、このフリホール豆の根が、空気中の窒素を取り込んでアミノ酸を生成し、土を肥やすことです。また、フリホール豆とトウモロコシには、人間が必要とする栄養素であるアミノ酸が、それぞれ数種類ずつ不足していますが、一緒に食べることで、この不足を互いに補うことができます。ですから、フリホール豆の煮物をトウモロコシのトルティージャに包んで、タコスにして食べることは、栄養面でとても理にかなったことなのです。

 ミルパの地面には、カボチャの主枝が這うように伸びています。カボチャの葉は、水平に広がって湿気を保ちます。また、害虫を寄せ付けない成分も含まれています。普通は雑草として取り除かれてしまうような野生の植物も、ミルパでは、トウモロコシと共生しています。その結果、それぞれの風味や栄養が豊かになり、食卓にのぼると一層おいしい料理になります。ミルパの周囲には、トウガラシが植えられます。トウガラシは、料理に味や彩りを添えるだけでなく、畑の害虫予防にも役立っています。トウモロコシには、キノコが生えることがあります。一見グロテスクな、気持ちの悪い形状をしていますが、このキノコはウイトラコチェという、すばらしくおいしいキノコです。

 ミルパには、豊かな食物を求めて、鳥や哺乳類、昆虫などがやってきます。それらの動物たちも、最終的には食用となり、メキシコの食卓を豊かに彩ります。

foto
写真:人口の浮島「チナンパ」 ( Hidroponia )

 人口の浮島「チナンパ」に作られたミルパの風景は、とりわけメキシコらしいものです。チナンパは、湖、川、沼地の岸辺を利用して作られます。というのは、常に一定の水量を維持している、穏やかな水面が必要とされるからです。水面より上に出る、長方形の高い部分は、水底の土を利用して作られます。周囲には、アウエホテというヤナギのような木が植えられます。アウエホテの根はチナンパを支えて安定させ、葉は日陰を作ります。各チナンパの四方は水路となるため、常に湿気のある状態が維持され、年に3回、トウモロコシを収穫することができます。そのため、チナンパにミルパを作ることは、とても効率的ですし、自給自足を可能にする理想的な農業であるとも言えます。チナンパは、かつてはメキシコ各地で見ることができましたが、年々減少しています。現在、チナンパをみることができるのは、メキシコ市のソチミルコです。

↑ PAGE TOP

inserted by FC2 system