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コロンビア大衆運動2013:闘争心はあるも統一がない

フェルナンド・ドラド
Rebelion 2013/12/31

 2013年8月30日は、危機的な瞬間として、歴史に残る日となるだろう。なぜなら、その日、コロンビアのフアン・マヌエル・サントス大統領が、何万人もの農民が中心となった市民の抗議行動に対抗するために、軍隊を動員したからだ。農民たちは、いくつも締結された自由貿易協定の交渉やり直しと、農村の経済を中心に据えた農業政策を求めて、結集していた。

 8月30日早朝、サントス大統領は、国営放送で全国に呼びかけた。幹線道路の封鎖 ―特にボヤカ県、クンディナマルカ県、ナリーニョ県における封鎖― の解除を要求するためだった。というのは、この封鎖によって、800万人以上の住民を抱えるボゴタ市への食料供給が、完全に遮断される恐れがあったからだ。

 多数の大規模な抗議行動、運動、ストライキが行われた2013年にサントス政権が直面した事態の中でも、最も危機的な瞬間だった。それらの運動には、全国の農民や小規模農家、先住民、医療労働者、学生、環境活動家、一般市民らが参加していた。

 一連の運動の始まりは、昨年2月から3月にかけての、全国コーヒー労働者ストライキだった。6月7日からは、カタトゥンボ地方で、戦闘的な農業ストライキが57日間続いた。8月19日からは、コロンビアを2週間、麻痺状態に陥れた全国農業ストライキが始まった。10月には、4万人の先住民が参加した先住民・人民ミンガの抗議行動があった。10月から11月にかけては、医療労働者や学生が、政府の医療・教育政策に強く反対する抗議行動を行った。最後は、12月、ボゴタ市のグスタボ・ペトロ市長の罷免に抗議するための、ボゴタ市のボリーバル広場における大規模な集会だった。

 大衆運動が主役となった1年だった。農民による抗議行動が中心であったが、それ以外にも、多くの地域で、様々な紛争や抗議行動が起こった。電力や鉱山の巨大プロジェクト(エル・キンボ・ダムやウラIIダムの建設、サントゥルバン鉱山やラ・コロサ鉱山の開発など)や、住宅用の公共サービス(電気、上下水道)の民営化に反対する抗議行動、石炭・ニッケル鉱山(セサル県エル・パソとラ・グアヒーラ県セレホンの石炭鉱山、コルドバ県モンテリバノのニッケル鉱山)の労働者のストライキなどであった。

 コロンビア国民は、略奪と強制立ち退きの実行を覆い隠してきた長く暗い闇を経て、立ち上がり、組織化され、粘り強く勇敢に戦っている。組織化と行動の新しい形を作り出している。土地をめぐる紛争や文化的な多様性の中で、新自由主義モデルの押しつけに立ち向かっている。組織的であるというよりは自発的であり、政治的意識よりも絶望が強い。しかし、これは、国民が反対運動を作り上げ、より前進するための環境を整える、本能的な形である。

 結集した民衆は、政府からの弾圧を受けたり、交渉の延期や引き伸ばしにあった。コロンビア国家の戦いの処方箋は、10人以上の死者と、何百人もの負傷者、逮捕者を生み出した。その上、労働組合や社会運動の指導者を狙い撃ちにした殺害や嫌がらせも続いているし、土地返還運動の指導者たちの殺害も増加している。

 具体的な成果の中でも特筆すべきは、コーヒー労働者収入保護プログラム(PIC)について、合意に達したことだ。このプログラムは、コーヒーを栽培する50万以上の家族に助成金を給付するプログラムである。また、カタトゥンボの農家400家族の栽培作物を、コカから合法的な作物へと変更することについて、取り決められた。先住民運動によって、土地所有と自治についても協定が結ばれた。その他の要求事項の大部分は、解決することができず、解決できたものについては、政府が巧妙に、政権の政策の一環として発表している。

 それ以外の重要な結果は、自由貿易協定のマイナス面とコロンビア経済に与える影響、農村住民の深刻な経済状況について、広範な階層の都市住民の意識を高めることができたことだ。市民は、農業ストライキの期間中、連帯を表明して、その意識の高まりを示した。そして、そのことが政府に圧力をかけ、農民組織との交渉に応じざるを得なくする大きな要因となった。都市住民は、その沈黙と順応主義から脱するという合図を送ったのだ。

 これらの大衆運動の結果を総合的に見ると、プラスではあるが、しかし複雑で、矛盾があり、憂慮すべき点がある。大衆運動が政府に困難な決断を迫ったことで、サントス大統領は、軍の介入という脅しをかけることになった。その時、大衆運動の指導者たちは、この運命を分ける瞬間に立ち向かうすべを知らなかった。抗議行動のまとまりを保つことができず、新たな作戦を生み出すこともできなかった。しかし、それができていれば、大衆運動は主導権を握り、政府の弾圧政策と引き延ばし戦術を打ち負かすことができたかもしれないのだ。かくして、政府は、この強大な運動を、脅しによって麻痺させた。しかし、この運動によって、国民の支持率が一時的に30%を下回る事態となった。

 複雑であると述べた理由は、様々な運動が一斉に立ち上がり、蓄積されてきた力が最大限まで張りつめたにもかかわらず、具体的な成果はわずかだからだ。獲得したものは、その努力に見合うものではない。従って、運動の継続を唯一保証するものは、現在採用されている主流の新自由主義的資本主義モデルがもたらす生活・労働環境の悪化だけなのである。達成したわずかな合意と政府の不履行が、2014年を新たな運動と抗議の年とするための環境を作り出す。しかし、運動がどれほど強力で確実なものになるかは、民衆のやる気と、各組織の状況、団結する能力、政治的な指導の的確さにかかってくる。

 矛盾していると述べた理由は、かかわっている大衆運動や社会運動の規模は巨大で、多様で、様々な部門におよび、抗議と闘志を非常に豊かに表現しているにもかかわらず、その深さや社会的多様性は、彼らの運動の永続的な連携の構築に反映されておらず、ましてや、党内部のみに働きかけている左派の各政党の統一には、全く反映されていないからだ。民衆セクターの統一なしに、勝利の見込みはない。

 憂慮すべきであると述べた理由は、脅威が迫っているからだ。最も戦闘的で反民衆的なセクターが、虎視眈々とうかがっている。和平プロセスを妨害し、政府の手綱を再び握り、コロンビアのいかなる形式の民主化をも妨げようと、必死になっている。右翼準軍事組織は、民衆の指導者を引き続き殺害しており、極右勢力は陰謀を企てて、民主主義的な大衆運動の前進を妨げるために、秘密裏に活動している。しかしまた、サントス陣営も、新自由主義モデルを促進する一方で、「新しい開かれた民主主義」的手法で、大衆運動を支配的な枠組みへと導こうとしている。

 ボゴタ市長の罷免は、民衆セクターに対する直接的な打撃である。公共サービスの非民営化は、検事総長の命令で禁止された。この検事総長は、公共物の強奪に基づく発展モデルに固執する、寡頭支配層の富豪たちの利益に便宜を図る人物である。政治と選挙の分野における基本的な権利を侵害するそのような侮辱を前に、民衆セクターの政治参加は、あいまいなものになっている。大衆運動全体の反応は、連帯はしていたが、確信に満ちたものではなかった。

 2014年の年明け早々、グスタボ・ペトロ市長の罷免が確定すれば、大衆運動に不利な影響を与える可能性がある。すでにいくつかのセクターにおいて見られるように、直接行動や投票という行為への懐疑が、さらに大きくなるかもしれない。時代は、多くの反省と、広い心と、大いなる崇高さを要求している。

 さしあたっての心配は、大部分の国民が懐疑的になっている中、左派が選挙期間に突入することで、心配は増すばかりである。憂慮すべき要因は、連邦議員選挙の非常に長い候補者名簿に、民衆セクターの多くの代表者が含まれていることや、団結と連帯が不足(上院選挙のための緑の党、進歩党、愛国同盟の選挙連合は例外)していることである。われわれが、より多くの議論と明解さを必要としていることは、誰の目にも明らかだ。いずれの団体や政治勢力も、それぞれの組織の中に「引きこもって」いて、小さな利益を守っている。民衆が犠牲と戦いの偉大なるあかしを示してきた一方で、民衆の指導者は役不足で、党派的な解釈と狭量な姿勢で、身動きが取れなくなっている。

 大衆運動の偉大なる激動の1年が過ぎた今、政治的・組織的に最高の成果を得たわけではないことは、確かなようである。それが単なる勘違いであることと、2014年がわれわれにとって、民主主義の防衛、平和の獲得、国家と国民の主権の構築において、本当に前進する年となることを願う。闘志あふれる良い年を!

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