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エル・チャポの多国籍マフィア

コロンビア国立大学の研究グループは、麻薬カルテルによる自国の苦い経験に基づき、メキシコにおいて「エル・チャポ」・グスマン・ロエラに起因する治安問題の側面は、完全には掌握されていない、と警告した。それらの研究者やコロンビア警察によれば、シナロア・カルテルは、パブロ・エスコバルや「エル・ロコ」・バレーラの母国を含め、ラテンアメリカにおける麻薬密売の主要な組織網を、すでに支配下に置いている。グスマン・ロエラは、各地の取引を支配する一種の企業グループのリーダーになり、メキシコ政府にとっては、すでに「大きすぎる」存在になってしまった。

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写真:シナロア・カルテルのボス、ホアキン・グスマン通称エル・チャポ(Especial)

ラファエル・クローダ
Proceso 2013/01/05

 一犯罪組織が、正真正銘のホールディング・カンパニー、つまり、ラテンアメリカのほぼ全域に触手を伸ばす多国籍企業へと変貌を遂げた。その密使たち、すなわち、シナロア・カルテルの密使たちは、彼らの「フランチャイズ」の本物の経営者たちである。それが、エル・チャポ・グスマン、メキシコの国にとっては、もはや大きくなり過ぎた犯罪者である。

 コロンビア国立大学(UN)の政治学者パブロ・イグナシオ・レジェス・ベルトランが、広範な研究の結果を前もって発表したところによると、コロンビア -麻薬密売が頻発している国- の様々な地域において、このシナロアの男のことが、賞賛や恐怖と共に話題に上る。

 「コロンビアのすべての麻薬マフィアが、エル・チャポと取引することを望んでいる。彼を探し、取引を持ちかける。エル・チャポは現在、麻薬マフィアのナンバーワンだ。コロンビアにいるエル・チャポの共同経営者たちの話によれば、メキシコでは、エル・チャポは神々の中の神であり、シナロア・カルテルは、今ある麻薬マフィアの中で最強である」と、レジェス氏は指摘している。レジェス氏は、コロンビア国立大学の司法と政治、社会制度とグローバリゼーションの文化研究グループの主任教授であり、マフィアの社会文化研究分野の専門家でもある。

 レジェス教授が当紙に答えたところによると、同教授の研究グループによる、コロンビアとメキシコのマフィア事情の相関関係についての研究は、今年、発表される予定である。その研究の中では、グスマン・ロエラは、麻薬カルテルのボスをはるかに超えた位置づけにあることが、明らかにされている。

 「グスマン・ロエラは、マフィア企業家であり、シナロア・カルテルを、コロンビアやエクアドル、ペルー、ボリビア、アルゼンチンに支社やフランチャイズを持 つ、マクドナルドのようなグループ企業、またはホールディング・カンパニーに進化させた。あらゆる場所に部下がおり、その部下たちは、エル・チャポの企業の支配人たちだ。エル・チャポは、物流管理システム、庇護、共謀のネットワーク、麻薬を搬送するための環境を提供する。パブロ・エスコバル・ガビリア(すでに死亡したメデジン・カルテルのボス)も、彼の時代には同じことを行っていたが、しかし、エル・チャポの場合は、それを地球の半分に及ぶ規模で行っているのだ」

 レジェス教授によると、コロンビアの治安当局は、ロス・ラストロッホスやロス・ウラベーニョスなどの犯罪組織が活動する地域において、エル・チャポの部下の数が増加してきていることに気付いた。この二つの犯罪組織は、準軍事組織の残兵たちで構成され、コロンビアの麻薬密売取引を手中に収めてきた。

 コロンビアの情報機関の情報によると、エル・チャポが送り込んだ部下たちは、エル・チャポの甥と思われる人物も含めて、地元のコカイン供給者たちと緊密に連絡を取り出した。というのは、これらのコカイン供給者たちは、麻薬の総合的な取引を行うことを狙っており、シナロア・カルテルの庇護と物流管理システムを必要としているからだ。

 ペルーでは、組織犯罪に対する第四検察庁は、エクアドルとの国境地域におけるシナロア・カルテルの活動について、引き続き調査を行っている。国境地域では、エル・チャポの組織網は、コロンビア、エクアドル、ペルーの犯罪者たちと一体化しており、コカインの生産物を保護し、それを搬送するための各経路を支配している。

 コロンビアでは4日(金)、検察庁の人権擁護委員会が、ブエナベントゥーラの西南にある港で、コカインの出荷を確認しているメキシコ人のグループがいたことを報告した。この場所は、中米、メキシコ、米国向けの麻薬の、大型の船荷の主要な発送地点である。

 レジェス・ベルトラン教授によると、「シナロア・カルテルというホールディング・カンパニーは、アンデスの国々(ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー)において、コカインの生産と流通の物流管理システムを監督している。また、エル・チャポの各地の共同経営者たちは、フランチャイズの形で仕事をしているが、その生産、流通経路において、メキシコ人たちの支配力が、ますます強くなっている」

 また、同教授の説明では、「ブエナベントゥーラは、戦略的な出荷地だ。他には、ウラバ湾(コロンビア北西部)があり、そこでは、エル・チャポは、麻薬を中米やメキシコに送り込むために、ロス・ラストロッホスやロス・ウラベーニョスを共同経営者として活動することが可能だ。中米やメキシコでは、エル・チャポは、その麻薬を米国へ運ぶための、別の仕組みを持っている」

 レジェス教授によると、「そうした理由から、エル・チャポ・グスマンやその全組織網を根絶やしにするという仕事は、メキシコ政府の手に余る仕事となってしまった。というのは、エル・チャポ自身が、今やホールディング・カンパニー、すなわち、多国籍企業の本社なのであり、その企業は、マフィアの組織網を有しており、メキシコやその他の国々の警察や軍の機関の内部に潜入する、強大な勢力を有しているからだ」

 レジェス教授の話によると、(2001年1月19日に、エル・チャポがハリスコ州のプエンテ・グランデ刑務所から逃走して以来、)メキシコにおける最重要指名手配者である麻薬マフィアが、これほど長期間逮捕されずにいるということは、政府の役人たちによる保護網の存在なしでは、「不可能な」ことである。

 「エル・チャポは、共同経営者たちを通じて、この組織の枠組みを全域で再現した。(…)エル・チャポは、麻薬を搬送するための軍隊、航空機、小型船を持ち、資金洗浄のための仕組みを所有し、南米から米国までの様々なルートや商業経路を支配している。また、彼の多国籍企業の組織網を使用するにあたって、共同経営者たちや支社、フランチャイズから、一定の割合の金額を徴収している。それは、麻薬のカルテルを、はるかに超えたものである」と、レジェス教授は指摘している。

(すでに発売中のProceso1888号の主要報道記事より抜粋)

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