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労働組合マフィア

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写真:石油労働組合のトップ、カルロス・ロメロ・デスチャンプス。ベラクルスでのエンリケ・ペニャ・ニエトの演説集会にて (Miguel Dimayuga)

デニス・ドレサー
Proceso 2013/10/10

 改革法案が可決され、変革が約束されたにもかかわらず、メキシコの労働組合の「偉大なる」リーダーたちは健在であり、依然として君臨している。彼らは地方ボスであり、略奪者であり、独裁者であり、それは永遠のクラブである。フランシスコ・クルス・ヒメネスが、その著書「労働組合マフィアのボスたち」で書いたように、彼らは、反民主主義的な労働組合長老支配を作り上げることを可能にした、政治権力との邪悪な関係の産物だ。彼らは、彼らの「既得権益」を制限するようないかなる企てにも抗議する組合の長に、自ら収まることを可能にした政府の承諾の産物だ。彼らは批判を受け付けず、組合員の立場には立たず、主義ではなく利益に従う古い体制の象徴だ。彼らに立ち向かえば、死か刑務所が待つのみである。

 彼らの成功の源は、時の大統領に忠誠と従順を示すこと、経営陣を喜ばせて労働者を抑え込む傾向、全組合員を囚われの臆病な大群に変えてしまう能力、排除条項やブラック・リスト、規約の工作などのあらゆる種類の計略を利用する能力にある。その計略は、彼らの再選を「今回に限って」認めるために、しかし実は、一生涯、自らを組合長に任じ続けるために行われる。高位の、権力を持った、裕福な、処罰されない終身組合長で居続けるために。そして政府は、彼らの忠誠と引き替えに目をつぶり、かかわりをもたない。政府は、彼らに実入りのいい仕事を続けさせ、彼らの銀行口座をふくらませ、マイアミやサン・ディエゴに家やマンションを持たせる。

 彼らは健在であり、依然として君臨している。ほとんどすべての部門に根を張り、その支配は各州で確実に繰り返されている。彼らとは、ビクトル・フローレス・モラレス、フランシスコ・フェルナンデス・フアレス、フアン・ディアス・デ・ラ・トーレ、ナポレオン・ゴメス・ウルティア、ホエル・アヤラ・アルメイダ、カルロス・ロメロ・デスチャンプス、ホアキン・ガンボア・パスコエ、ビクトル・フエンテス・デル・ビジャールなどのことだ。彼らは、フィデル・ベラスケス、レオナルド・ロドリゲス・アルカイネ、ルイス・ナポレオン・モロネスら、先人の教えに忠実に従っている。彼らは非常に高齢で、再選され続け、終身的に身分が保証されている。彼らの多くは、30年以上権力の座にいる。彼らの多くは、ぜいたくな暮らしをし、高価なものを好み、常軌を逸した特権を有している。

 例えば、公務員労働組合連合の事務総長であることから、国家公務員のリーダーと見なされているホエル・アヤラは、サラブレッドの馬に取りつかれている。ため込んだ財産は1500万ドル(約14億7000万円)以上で、1977年以降、強硬な姿勢で労働組合の要職に居続けている。連邦下院議員に2回、上院議員に3回選出された。また、別の労働組合のリーダーのホアキン・ガンボア・パスコエは、労働会議(CT)のトップへの昇進を、7万ドルの限定生産のイエローゴールドの時計で祝った。これらの人物はみな、汚職に関係している。労働組合の権利の取引に関係し、公職を恩顧主義的に利用している。また、メキシコの労働組合寡頭支配の強化に関係している。

 そして、さらに悪いことには、その地位に永続して居座っている人たちを問題にしたり、何かを公表したり、批判したり、綿密な調査を行ったりする人々は、わずかである。メキシコの社会は、貪欲な長老支配を、メキシコの政治において伝承されてきた、変えることのできないこととして受け入れている。そのため、彼らはその地位に永続的に居続けることができる。報道陣の取材にも、屈辱にも、スキャンダルにも持ちこたえ、その一方で、組合員にとって最悪の方針をとる。労働者たちは搾乳できる乳牛であり、労働組合の自治は略奪のための白地小切手になっている。

 ビクトル・フローレスは、右手に5万ドルの時計をつけている。ナポレオン・ゴメス・ウルティアは、テポステコ山の頂に400万ドル(約3億9100万円)の家を建設した。ルイス・ナポレオン・モロネスは、手のすべての指に宝石をつけていた。カルロス・ロメロ・デスチャンプスは、カンクンに約150万ドルの家を所有している。その一方で、労働者たちの日給は300ペソ(約2290円)である。けれども、石油労働組合のトップであるカルロス・ロメロは、2011年には、「労働組合幹部会への助言」の名目で2億8200万ペソ(約21億6000万円)と、労働組合費から2億ペソを受け取った。

 現在、政府が述べ立てている美辞麗句は、「メキシコを動かそう。ふさわしい場所まで」である。しかし、労働組合のドンたちが誰もその場を動かないのに、どのようにして動かせばよいのか? 公約され、合意に達した諸改革が「労働者の権利を守る」ことを約束しているなら、では、その権利を略奪しているのは誰なのか? エネルギー改革は、黒い陰謀や怪しい取引、スポイルズ・システム、不正に得た富の、悪臭漂う物語の書き手、カルロス・ロメロ・デスチャンプスと対決することを含まないのか? カルロス・ロメロは、労働組合を通じて、兄弟、いとこ、義兄弟、甥や姪、友達に庇護を与えてきたというのに。メキシコ石油公社(PEMEX)が労働組合に貸した、そして組合員たちは今日までその行方を知らされていない5億ペソのスキャンダルが、いまだ明らかにされていないのに。フランシスコ・ラバスティーダの大統領選を支援するために、PEMEXの巨額の資金が回されたことについて、誰も処罰を受けていないというのに。無処罰や特権が、どこへ行こうとカルロス・ロメロ・デスチャンプスを守っているのだ。

 だから、彼を告発することが重要だ。だから、エネルギー改革に関心のあるメキシコ人一人一人が、次のことを思い出すことが、さし迫って必要だ。それはつまり、カルロス・ロメロ・デスチャンプスは、2007年から2010年まで、毎日68万5000ペソ(1時間に3万ペソ弱)を動かしていたということだ。どのように、誰のために動かしていたかは誰も知らない。その間、エンリケ・ペニャ・ニエト政権は沈黙を守っている。PEMEXも沈黙を守っている。労働組合も沈黙を守っている。そして、カルロス・ロメロの娘のパウリーナ・デスチャンプスは、フェイスブックのページで、自家用ジェット機で世界中を旅する様子や、クルーザーでの遊覧、1万2000ドルのエルメスのバッグを見せつけている。それでも、カルロス・ロメロ・デスチャンプスは、自分が「平静で、悪いことはしていない」と主張している。メキシコの労働組合トップの聖家族は、ずっとこうして暮らしている。来る日も来る日も、マフィアの物語を書き加えながら。

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