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「居心地の悪い子供たち」のビデオ、論争止まず

数日前にインターネット上に公開されたビデオ映像「居心地の悪い子供たち、大統領候補者に要求する」とその第二弾が、大統領選を今年7月に控えたメキシコ国内で波紋を呼んでいる。強盗、汚職、貧困、不法移民、麻薬犯罪の場面を子供たちが演じているこのビデオについて、メキシコの現実を反映しているという意見や、単なる政治的脅迫であるとする意見などがある。

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写真:居心地の悪い子供たちのビデオより

Univision Noticias 2012/04/13

メキシコの「居心地の悪い子供たち」にまつわる論争が留まるところを知らない。子供たちが、メキシコの汚職、犯罪等の現実を演じ、大きな物議を醸したビデオ映像第一弾の公開後、数日を経て、第二弾が公開された。今年7月の大統領選挙の選挙戦を戦っている各候補者たちに、真の改革を求める内容だ。

「私たちのメキシコの未来」運動から発表されたこのビデオ第二弾では、今ではもう有名になった子供たちが、この国の現状についての意見を述べている。

国内で論争

子供たちが、誘拐犯、汚職警官、麻薬密売人などに扮したビデオ第一弾は、暴力に苦しむメキシコ国内に、激しい論争を巻き起こした。警鐘や問題提起の意味で必要なビデオだという意見がある一方で、政治工作や未成年者虐待だという意見もある。

子供たちは、事業家、犯罪者、汚職警官などに扮し、未成年者だけが住む「メキシコ」で、盗み、賄賂を払い、銃弾にさらされている。BGMには1970年代のゆったりとしたバラード「ある朝」が流れている。

民間企業や大学の援助による資金で制作され、インターネットで配信されたビデオ「居心地の悪い子供たち」は、7月1日の大統領選で対決する候補者たちに、直接メッセージを送る場面で終わる。

ひとりの少女が、カメラを見ながら言う。「もしこれが、私たちを待っている未来なら、そんなの嫌です。私たち自身のためじゃなくて、あなたたちの政党のために働くなんて、もうたくさんです。見せかけの改革なんて、もうたくさんです」

この4分間のビデオは、小太りの少年扮する事業家が、ある朝目覚め、タバコに火をつけるところから始まり、麻薬組織幹部のエドガー・バルデス容疑者、通称バービーが、過剰収容の刑務所へ収監される場面で終わる。

麻薬マフィアが大きなライトバンから機関銃を発砲し、警察官が銃で応戦、逮捕に走る間、学生カバンを持った少女たちが、叫び声をあげて避難場所を探す。演じているのは、すべて子供たちだ。

政治家らがビデオの公開中止を要請

このビデオは、子供たちが麻薬密売人、刃物を持った強盗、武器の運搬屋などに扮する恐ろしい映像であるにも関わらず、主要な大統領候補者たちは、ビデオに好意的だ。左派のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール候補は、「良くできている。衝撃的だが、これが現実だ」とコメントした。

また、制度的革命党(PRI)のエンリケ・ペニャ・ニエト候補は、「『居心地の悪い子供たち』のメッセージを支持する。周囲でも、同じ意見が聞かれる。つまり、今や、『制限時間いっぱい』だ。希望を新たにして、メキシコを変えるときがやってきた」と、ツイッターに書き込んだ。

国民行動党(PAN、現与党)の女性候補者ホセフィーナ・バスケス・モタは、「『居心地の悪い子供たち』のビデオは、気づかないまま済ませてはいけない、という呼びかけだ」とツイートした。

しかし、すべての人が賛同しているわけではない。

評論家でコラムニストのアルバロ・クエバ氏は、「環境汚染に苦しむ住民。怠け者の小さな汚職政治家に抗議する子供たちと、それを攻撃する子供警察官たち。苦しみもがく悲惨なメキシコの映像は、政治工作だ。この映像を批判できる候補者は、いないはずだ。なぜなら、批判すれば、犯罪に満ちた未来がいいと言っていることになるからだ」と述べた。クエバ氏は、このビデオは有害で、明白な選挙法違反だと考えている。

疑念を引き起こすビデオ

これは、疑いを呼び覚ますビデオだ。多くのメキシコ人は、2006年の大統領戦について、事実が歪められたと考えている。つまり、民間機関によって制作・後援された一連の広告や宣伝が、「左派のロペス・オブラドールが勝てば、すべてを失う可能性がある」というメッセージを発し、ロペス・オブラドールへの恐怖を生じさせたのだ。ロペス・オブラドールは、僅差でカルデロンに敗れた。

クエバ氏は、「このビデオは、メキシコの大統領選をますます混乱させることにしか役立たない。絶望と落胆をもたらすだけだ」と述べた。

また、クエバ氏は、「ロペス・オブラドールへの恐怖を植えつけるために、民間事業家が支援して作られた宣伝は、カルデロンに有利に働いたが、このビデオも、現在選挙戦トップを走るペニャ・ニエトを利するものだ」と考えている。というのは、ペニャ・ニエトが所属するPRIは、投票率が低いケースで勝利するための巨大な仕組みを、大部分の州に持っているからだ。「このビデオを見たら、投票しに行く気がなくなる。だから、このビデオは、投票を棄権させることを意図していて、その結果、選挙戦トップを走るPRIのエンリケ・ペニャ・ニエト候補が勝つことになるだろう」と、クエバ氏は述べた。

ペニャ・ニエト陣営は、このビデオへの声明発表の要請に応じていない。

他の陣営では、大統領広報官でアナリストのルベン・アギラール氏が、ビデオを制作した団体の主張を受け入れ、国民の一考を促すビデオだとの見解を発表した。アギラール氏は、「この国では、誰もが物事を悪い方向に考え、人が良い行いをすることがあるとは考えることができない。ビデオは、とても良いと思う。賢明で、助けとなるだろう」と述べた。

保険会社GNPが率いるこのビデオ制作グループは、新聞に全面広告を出し、ビデオは、「治安の悪さ、貧困、失業、麻薬組織の問題を放置してきたメキシコ」に住んでいる、多数の市民の不安を表していると伝えた。

子供を使ったことに異論を唱える人々もいる。

労働党のマリオ・ディ・コンスタンソ議員は、水曜日、議会において、「ビデオでは子供たちが武装し、タバコを吸い、銃を持って誘拐し、トランクに押し込まれる。そのようなことは受け入れがたいし、スキャンダラスなだけのように思う」と述べた。

また、PRIのマルエル・アンヘル・ガルシア・グラナード下院議員は、ビデオの公開を禁止するよう政府に要請した。ガルシア議員は、「この国の大きな問題を解決するための映像は、このビデオのようにスキャンダラスで神経を逆なでするものであってはならないし、ましてや、それに未成年を使うことに反対する」と述べた。

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