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死者の日(モレーロス州オコテペック)

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写真:モレーロス州オコテペックでの死者の日 (Mexico Desconocido)

オルガ・ハモウス・ガランテ
Mexico Desconocido

 モレーロス州の州都クエルナバカに近いオコテペックの集落では、死者の日は、最も代表的な宗教行事で、その文化的、宗教的な豊かさによって、故人に対する信仰が際立ちます。

 メキシコの伝統は、信仰、祭式、信心、ユーモアと夢が元になっています。その中でも、最も重要で、人々に深く定着している伝統の一つが、間違いなく、死者の日の行事です。メキシコの様々な墓地で行われますが、モレーロス州もその例外ではありません。

 オコテペックは、「松(オコテ)の山」を意味し、ほとんど気づかないほどの、細い帯状のオコテ山で隔てられています。オコテペックは古い集落で、州都クエルナバカからは、国道テポストラン線でほんの3分のところにあります。この集落は、四つの地区に分けられ、それぞれの地区に礼拝堂があります。それらの礼拝堂は、スペインの副王領時代の管理方法が、今も引き継がれています。そのために、同じく先スペイン時代までさかのぼる先住民の習慣と伝統の大部分が受け継がれてきています。

 死者の日は、オコテペックの最も重要な四大宗教行事の一つです。他の三つは、クリスマス、キリストの受難劇、聖体の祝日となっています。また、モレーロスの州都に近いことで、観光客や地元の人々が訪れるのに都合がよい場所であるため、この行事は、州内30カ所で行われる死者の日の行事の中で、最も混雑します。

 クエルナバカを出て、最初に目にするのが、オコテペック墓地です。この墓地は、メキシコの墓地の様式をよく表しています。鮮やかな色で飾られた無数の霊廟、教会、大聖堂が、死後も生命が継続することへの信仰を、確かなものにしています。墓地は、まさにこの行事のための支度が始められる場所です。というのも、死者の日の11月2日の10日前になると、家族全員が墓を修繕したり、色を塗って飾りつけしたり、準備をはじめるからです。

 オコテペックの伝統の一つは、その年に亡くなった人々に敬意を表して、供物台を作ることです。これらの供物台は、「新しい供物台」とも言われます。これらは、机の上に並べられ、故人の体を再現します。その体は、新しい服と履物、帽子またはショールを身につけ、頭の位置には、伝統的なドクロ型の砂糖菓子が置かれます。服を着せると、次は体のまわりを、故人が好きだったお酒や料理で取り囲みます。故人が子供の場合には、おもちゃや甘いキャンディーもお供えします。

 伝統的な供物はパンで、大地の産物で作られます。水は、魂が死と戦うための命の源と考えられます。また、道中の渇きを癒す役割も果たします。火は、汚れを清めるもので、供物台のろうそくを介して故人に届きます。風は、供物台の切り絵の色紙に動きを与え、故人の魂を楽しませます。

 供物台に見られる他の伝統は、センパスチルの花と、お香です。これらは、故人が家と家族のところへたどり着く道を見つける助けとなるものです。ろうそくを4本灯して、十字架の形に置く人々もいます。この十字架は、東西南北を指しており、故人の魂が行き着く道を祝福する役目を果たします。

 新しい供物台のある家は、供物台から歩道まで、花で飾られた道が伸びていることで見分けることができます。これは、その家で故人の到着を待っており、供物台を観賞したい人々は、入ってみることができるということを、知らせる方法でもあります。訪問者たちは招き入れられ、親切にパンとポンチェ、コーヒー、タマルでもてなされます。そのかわり、訪れた人々は、もてなしへの感謝のしるしとして、敬意と親愛の情を示し、供物台に飾るために、ろうそくや花を持って行ったりします。

 新しい供物台の家が非常に貧しい場合でも、故人に捧げる供物はとても豪華なものです。というのは、経済的にも時間的にも、すべてが故人に捧げられるからです。

 10月31日の夜には、教会の鐘を繰り返し鳴らし、子供の故人の到着が近いことを知らせます。11月1日の朝には、色とりどりの花々で飾られた墓地を訪れ、小さな故人たちに敬意を表してミサが行われます。夜にも鐘が鳴らされます。今度は大人の故人たちを待っているという鐘です。そして供物のための支度がなされ、11月2日の朝、墓地へ行って、ミサに出席します。

 このように、2日間、故人の到着を、喜びと悲しみの中で待つのです。一方、近所の人々も、新しい供物台が置かれた家々を訪れ、共に食事をします。

 こうした日々の間、オコテペックの通りには、焼き立ての、伝統的な死者の日のパンを売る屋台が並びます。また、訪れる一般の人々も、供物台に飾るために必要な、全ての品を手に入れることができる、露店が並んでいるのを見ることができます。カボチャの民芸品、ドクロ型の砂糖菓子やチョコレート菓子、ろうそく立て、ろうそく、お香、花などを売っています。

 そのほかに、オコテペック独自のものは、10月31日の夜から11月1日にかけて行われる行列です。全住民が墓地へ出向き、故人に供物を捧げ、それから、全員が座って、墓の側で食事をします。

 オコテペックは、観光客にはあまり知られていない場所ですが、死者の日には、それを祝う特別な様式のために、非常に魅力的な土地になります。というのは、訪問者たちは、このメキシコの伝統行事の味、香り、色を楽しむことになるからです。

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