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表現の自由への攻撃

ヘスス・カントゥー
Proceso 2014/03/27

 メキシコ政府が、治安や暴力の問題は改善されているという印象を懸命に作り上げる一方で、ジャーナリストやメディアに対する攻撃は増加している。表現の自由が侵害された件数を2007年から数えはじめた市民団体アーティクル19によると、2013年は、ジャーナリストにとって、2007年以降で最悪の年となった。

 2013年、ジャーナリストへの攻撃は、前年より60%増加した。しかし、最も重大なことは、攻撃の60%が役人によるものであり、報道活動の主要な敵は、政府だということだ。アーティクル19の報告書によると、2013年に報告されたジャーナリストやメディアへの攻撃件数は、330件だった。加害者を特定することができた274件のうち、146件は役人が加害者であり、49件は社会団体、39件は犯罪組織、30件は個人、10件は政党が加害者だった。

 そのため、アーティクル19は、ジャーナリストやメディアを保護するための政府の対策が失敗しているだけでなく、「こちらで政府が攻撃すれば、あちらで犯罪組織が殺害するという具合」だと報告している。

 ジャーナリストに対する暴力が悪化している自治体(ベラクルス州、コアウイラ州、メキシコ市)があることは明らかだが、それ以外にも、非常に重大な変化が起こっている。というのは、2007年には、ジャーナリストへの攻撃は、15の自治体に集中しており、残りの17の自治体(53%)では、被害はまったく報告されていなかったが、2013年には、被害が報告されなかった自治体が、タバスコ州、イダルゴ州、ナジャリ州のわずか3州となったからだ。この3州で被害がなかったのは、法が機能しているからでも、表現の自由が尊重されているからでもなく、ジャーナリズムが貧弱であるからだ。

 また、先週、メキシコ州とハリスコ州の政府が口封じ作戦を行い、アーティクル19の報告書を裏付ける結果となった。というのは、3月16日、メキシコ州政府は、すでに発売されていたプロセソ誌1950号を、大量に購入する作戦を実施したからだ(同誌1950号は、メキシコ州政府には麻薬組織の抗争を抑止する能力がないことを暴いているため、その号の販売を妨害しようとする作戦が、犯罪組織の仕業だとは考えにくい)。ハリスコ州でも、同誌増刊号「プロセソ・ハリスコ」に掲載された、ハリスコ州検察庁の対応についての報道記事が原因で、同様の買占め作戦が行われた。

 不都合な雑誌を買占める作戦は、ベラクルス州、タマウリパス州、ヌエボ・レオン州などでも行われており、残念ながら、急速に拡大しているようだ。この買占め作戦のような行動は、ジャーナリストへの攻撃として数えられていない。しかし、ジャーナリストを黙らせるための直接的な行動ではなくとも、結局は同じことで、その目的は、州内で起こったことや、州当局の欠陥だらけで規律のない行動、権威主義的で好き勝手な対応を、市民に気づかせないことだ。このような作戦は、ジャーナリストへの攻撃ではないと考える人もいるかもしれないが、民主主義にとって絶対に欠くことのできない「法による統治」や「知る権利」を侵害していることは確かだ。というのは、憲法で保証された表現の自由を侵害するために公金を流用しているため、法による統治を侵害しているし、市民が様々な情報を入手することを阻止しているため、知る権利を侵害しているからだ。

 一方、この衝撃的で気がかりな報告書を作成したアーティクル19は、17日(月)、アーティクル19メキシコのダリオ・ラミレス代表の自宅に、何者かが侵入したことを公表した。侵入者は、パソコン、仕事関連の資料、貴重品を持ち出していた。この侵入が「表現の自由を擁護する仕事」を攻撃するためのものであったと断言することはできない。しかし、アーティクル19のスタッフへの攻撃が5件発生していることや、その5件のいずれも「犯人の行方を突き止めるための捜査が行われていない」ことは、侵入者の目的や、当局の無能さ、または当局の共謀の裏付けとなっているようだ。ラミレス代表とスタッフらは、昨年4月、殺害の脅しをかけられたばかりだった。

 アーティクル19は、被害の報告を受けたうちの数件と、ジャーナリスト1名の殺害にまで至った事例について、詳細に調査し、加害者(と当局 ―加害者を捕まえないのだから、付け加えざるを得ないだろう)の意図を明らかにしてみせた。その意図とは、表現の自由を無効にし、秘密のうちに自由に違法行為をすることだ。

 アーティクル19の報告書は、攻撃を受けたジャーナリスト数人の衝撃的な証言を収録している。ベラクルス州のある新聞の編集長、ヒル・クルス氏は、「われわれは、真実だとわかっていても、それを自由に記事に書くことができない」と証言している。また、オアハカ州で新聞を発行し、ベラクルス州でも販売しているロベルト・エルナンデス編集長は、次のように証言している。「ベラクルス州では、われわれは拒絶された。新聞の販売許可が下りなかったのだ。ベラクルス州知事について書くことをやめることで、販売が可能になった。一方、オアハカ州では、現知事は比較的寛容だ。現知事には欠点はあるかもしれないが、それでも、表現の自由は尊重している。オアハカ州に、われわれを攻撃したがっている警察関係者がいることは知っているが、メディアに関与しないことが知事の方針だ。そのため、報道活動も続けていられるし、オアハカ州の当局による大規模な攻撃も受けずに済んでいる」

 以上のことから、議論の余地のない事実が三つあることがわかる。一つ目は、報道活動に悪影響が及んでいること。二つ目は、ベラクルス州のハビエル・ドゥアルテ知事が、脅迫に直接的に関与していること。というのは、エルナンデス編集長がドゥアルテ知事に関する記事の掲載をやめると、新聞の販売が許可されたからだ。三つ目は、ジャーナリストやメディアを攻撃するか、尊重するかについて、行政責任者の意見が決定的に重視されるということだ。

 いずれにしても、アーティクル19が報告書に書いた次の結論は、現実を表している。「アーティクル19が調査した事例の中で、被害を受けたジャーナリストが、その後も同様に報道活動を続けられた事例は、1件もなかった。国からの保護なしに、再び攻撃されるかもしれない恐怖から、仕事の内容を変更するに至ったのだ。犯罪関連の記事の掲載をやめた事例や、自己検閲をするようになった事例、または、そのまま廃業した事例などがある」

 結局、攻撃の犯人が誰かということは重要ではない。重要なことは、市民とジャーナリストとメディアの権利が侵害されていることと、その原因を主に作っているのが当局だということだ。それが、当局の無能さのためか、共謀しているからか、それとも、報道活動の自由に障害を設けることで利益を得られる ―少なくとも、当局の規律のなさや違法行為、無能さが知れ渡ることを邪魔することができる― からか、いずれにしても、主な責任は当局にある。

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