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米国にとってのメキシコの重み

フアン・カルロス・オルテガ・プラド
Proceso 2014/02/20

 メキシコは、米国にとって、どれくらい重要なのだろうか? 「少しだけ」という言葉が、口をついて出る。しかし、これは、(a)うそかもしれないし、(b)望ましいことかもしれない。

 そのどちらなのかを理解するための端緒は、トルーカで開催された北米首脳会議によって開かれた。エンリケ・ペニャ・ニエト大統領、バラク・オバマ大統領、スティーブン・ハーパー首相が参加した3カ国会議が、主なものだけでも、北米内の出入国簡略化プログラムや、3カ国のエネルギー関連省庁合同会議の開催、教育交換の促進、貿易拡大など、約束事を洪水のごとく連発したことは、すでに知られている。

 ところで、そのような約束をしたからといって、道理にかなった疑惑を無視して、楽観的になることはできない。その理由は色々ある。例えば、メキシコが、目標としていた事柄を達成できなかったこと、高レベルの会議で取り決められた計画の多くは、大抵忘れられるか歪められてしまうこと、善意の政策よりも情勢が優先されること、首脳会議というものは、明らかにプロパガンダとイメージのためのものであること(会議を行うこと自体が目的であり、単に上首尾に終わったと言われるために開催される)などである。

 このことは、とりわけ生産的な首脳会議であっても、わずかなことしか得ることができないことを意味している。その根本的な原因は、各国が、緊急事態や選挙、または明白な経済的利益がある場合など、非常に意欲的になっている時期だけ、約束をするということだ(なんと莫大な経費のかかる約束か)。約束事を取り決めたふりをするか、あまり重要でない事柄について取り決める方が、よほど利益になるだろう。

 そして、それこそが、まさにメキシコが失敗していることだ。つまり、他の国々を、対話したり譲歩したりせざるを得ないような状況に、導くことができないのである。トルーカで押し付けられたエネルギーと貿易についての政策課題は、メキシコよりも、米国とカナダの利益となるものであるし、メキシコからの唯一の時宜を得た要請であるカナダ入国時の査証廃止についても、期待を裏切られる結果となった。

 その上、この首脳会議には、とりわけ残念な一面があった。それは、米国とカナダにとって、この首脳会議は、重要ではないという印象を与えたことである。ハーパー首相は、首脳会議があるけれども、ソチ・オリンピックのホッケーの試合を見るために、うまく切り抜けるつもりだと、ツイッターに書き込んだ。また、ワシントンポスト紙が報じたところによると、オバマ大統領は、「メキシコに8時間あまり滞在したが、その滞在時間は、ワシントンからトルーカまでの往復のフライト時間の9時間より、1時間短かったし、オバマ大統領が週末にカリフォルニアでゴルフに費やした時間より、かなり短かった」

 また、同紙は次のようにも報じている。「オバマ大統領は、合間に時間をとって、シリアにおいてテロリズムが増大していることについて話すために、トルコの首相に電話をかけ、衣料品大手のギャップが、一部の従業員に支払っている最低賃金を、時給10ドルに引き上げる措置をとったことを強調するために、声明を発表し、その後の記者会見においては、ベネズエラの抗議行動について取り上げたり、ウクライナの情勢について見解を発表したりした」

 それに加えて、首脳会議の共同声明は、あらかじめ作成されていたものであった。

 明らかに、米国政府と交渉することは、カナダ政府と交渉することより重要である。なぜなら、それは、生存に関わることだからだ。必要不可欠なものを、北米連合から得られないのであれば、メキシコの「繁栄」は脅かされる。この場合、単に生産物や経済だけを、必要不可欠と見なしているのではなく、メキシコという国の展望すべてについて、必要不可欠なもの、ということである。これは、単なる誇張ではなく、中心となる重要な事柄だ。というのは、米国政府の遺伝子の中には、政治的・軍事的・財政的な干渉主義が、刻み込まれているからだ。このことは、米国が、すべての帝国と同様、自分たちが世界について描く展望を押しつけ、服従させたがることを見れば、納得のいくことである。

 メキシコは、それを回避しなければならない。それについては、四つの選択肢がある。服従すること(ほとんどいつも、そうしてきた)、2国間関係におけるイニシアチブを取ること(空想上の目標である)、殻に閉じこもって流されるままになること(危険である)、前記の三つを組み合わせること、の四つである。

 メキシコ政府は、病的なまでに米国に接近したがることが、いつでも解決策であるとは限らないことを、理解するべきである。諸大国と付き合っていくには、突き飛ばされても持ちこたえ、突き飛ばし返すことを知っていなければならない。確かに、メキシコ政府は、市場や同盟を多様化しなければならないと表明している。しかし、表明するだけで実行しないのだ。米国企業に最も都合のよい形で石油を渡してしまったし、通信事業でも、鉱山開発でも、農業でも、同じことが起こっている。

 さらに、メキシコが必要とされる場合も、やはり交渉をするべきであるし、交渉の仕方を知っていなければならない。そのためには、まずは、利用できる外交上の武器の範囲を、明確にわかっておくことである。例えば、在米メキシコ大使館が、米国に住むメキシコ人移民たちを組織化しようと試みたことを示すものは、何もない。もし移民たちを動員することができていたら、圧力をかけることができる大規模な移民集団となっていただろう。また、米国の議会において裏工作をしたということも、聞いていない。企業の中には、議会の採決結果を左右したり、法案を可決する確約を得たりすることができる企業があることは、周知の事実である。ところで、メキシコは、一多国籍企業よりもはるかに巨大なのであるが、例えば、メキシコ人移民や、メキシコの農産物の輸入拒否などに関して、米国において有利な法案を可決させることができていない。外交とは、肩を親しげに叩くことではなく、リアル・ポリティクスと積極的な圧力のことなのである。

 従って、メキシコにとっては、主権、経済政策の決定、選挙など、ある一定の分野においては、米国が大きく距離をとっていてくれることが望ましいし、メキシコが利益を得られるような場合のみ、距離を縮めてくれると都合がよい。それが政治の実用主義であり、すべての大国が行っていることである。

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