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フラッキングの真実 (1)概要

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写真:メキシコのプエブラ州におけるフラッキング

 メキシコでは、2013年12月のエネルギー改革によって、外国資本がエネルギー開発に参入することが可能になった。今後は、メキシコ国内での水圧破砕法(フラッキング)による非在来型天然ガス・石油の採掘が、大幅に増加すると予想されている。フラッキングは、非常に大きな危険が伴う技術だ。危険性を裏付ける科学的なデータも存在しており、多くの国々が、フラッキングによる開発に猶予期間を設けたり、全面的に禁止したりしている。そこで、本誌(ホルナーダ・エコロヒカ)216号は、それらの科学的データや住民・関係者の話をもとに、フラッキングの危険性と、フラッキングが健康・環境・人権に与える損害について分析した。

 また、本号では、フラッキングによるシェールガス採掘の影響についても取り上げている。シェールガス採掘は、大きな社会的・経済的・物的損害を引き起こし、人の健康と環境を著しく損なう。さらに、気候変動を悪化させ、地震を誘因し、危険な化学物質の大量使用で地下水を汚染する。これらのことは、現場の労働者や地域住民の経済・社会・文化・環境に関する権利を侵害し、生活の質を悪化させることを意味している。

 本号で取り上げたデータは、フラッキングによる非在来型化石燃料*の採掘が安全ではなく、持続可能でもなく、そのリスクはコントロール不可能で、多くの場合、管理していくことさえできないことを示している。つまり、クリーンエネルギーではなく、環境を著しく破壊するエネルギーだということだ。そのフラッキングがメキシコで行われたら、メキシコは一体どうなるのか?

 メキシコには環境汚染事故を処理する能力がなく、以前から、メキシコの農村や先住民の集落は、汚染された環境と極度の貧困に苦しめられてきた。

 近年も、暴力的なレベルの汚職がメキシコを悪化させ、破壊している。トランスペアレンシー・インターナショナルが2017年に発表した腐敗認識指数では、メキシコの汚職度はラテンアメリカ・カリブ海で最も高かった。メキシコでは、人権は侵害され、人権保護の活動家は迫害される。環境保護や汚染防止もできていない。破壊された環境の回復については、環境責任法で「環境を破壊した者が環境を回復させる責任を負う」と定められているが、グルーポ・メヒコの鉱山が起こしたソノーラ川汚染事故の例からもわかるとおり、破壊された環境を回復することは不可能だ。

 メキシコでは、法の適用が著しく不完全で、「環境を汚染した者が賠償責任を負う」原則も守られていない。法律自体も古く、汚染の基準値が諸外国よりはるかに高いままになっている。国が規制するべき化学物質の一覧表さえ存在せず、化学物質取扱いに関する法律もない。このような状況で行われるフラッキングは、政府と企業にとっては濡れ手で粟のビジネスだろうが、国民は身を守るすべがない。

 規制もできず、リスクも大きいため、メキシコは「予防原則」を適用して、フラッキングによる化石燃料の採掘を禁止し、メキシコとメキシコ国民を破壊し続けることをやめるべきだ。

 私たちは、フラッキング禁止国のリストにメキシコが名を連ねるようになるまで、フラッキングによる採掘を猶予(モラトリアム)するよう求めることが、緊急の課題だと考えている。まずやらなければならないことは、フラッキングのように大きな損害を引き起こすエネルギーから、代替となるクリーンなエネルギーの開発へと移行していくことだ。それは、人の健康と環境を損なわず、農村とその社会構造を侵害せず、破壊的なメガプロジェクトで先住民の集落や農地を破壊することのないエネルギーのことだ。

 本号の記事は、フロンテラ・コムネスのマリッサ・ジャコットとアンビエンテ・イ・サルーのリリア・アメリカ・アルベルトが執筆した。二人が読者に伝えようとしたことは、フラッキングの真実だ。フラッキングによる健康リスク、環境に与える影響、危険なフラッキングが諸外国ではモラトリアムまたは禁止の対象として定められていることなどについて、データをもとに伝えている。

* 非在来型化石燃料は、通常のガス田・油田以外から生産された天然ガス・石油のこと。シェールガス、シェールオイルなど。

(ラ・ホルナーダ・エコロヒカ216号 2018/02/03)

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