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フラッキングの真実 (6)騒音公害と微小地震増加

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写真:メキシコにおける抗議行動

景観の悪化と騒音公害

 フラッキングによる天然ガスの採掘では、広大な土地を使用する。そのため、動物はすみかを奪われ、景観が著しく悪化する。穿孔のオペレーションや通行車両による騒音は、近隣住民の負担となる。土地の砂漠化も深刻な問題になっている。

人為的な地震

 フラッキングによって微小地震が生じることはよく知られているが、実際には、近隣住民が感知できる規模の地震も起こっている。小規模な地震であっても、断層が不安定になれば、いずれ大地震を引き起こすことも考えられる。

 フラッキング後は、膨大な量のフローバック水(汚染物質を含む廃水)が、地中から地表に戻ってくる。採掘を行っている企業はこの廃水を処理しきれず、現状では、廃水を地下の井戸に注入するという廃棄方法がとられている。廃水の地下注入は、地下断層を不安定にし、地震を発生させる原因となっている。また、地震によって廃水井戸の被覆が損傷すれば、廃水が漏出して地下水を汚染する危険性がある。

 米国のアーカンソー、オハイオ、オクラホマ、コロラド、テキサスの各州は、昔から地震が発生しない地域だったが、ここ数年で、リヒター・スケール3を超える地震が急増した。震源の多くは、廃水井戸がある地域だった。オハイオ州のヤングスタウンでは、人為的な地震の規模が5.7に達することがあった。

 廃水の地下注入は、採掘時よりも大きな地震を引き起こすことがあり、マグニチュード3を超える地震が記録されている。米コロンビア大学の地震の専門家たちは、2011年に起こった複数の地震は、オハイオ州ヤングスタウンで観測されたマグニチュード4の地震も含めて、フラッキング廃水の地下注入と関連があると考えている。アメリカ地質調査所は、フラッキングに起因する大きな地震が、今後発生する可能性があると発表した。

 米国では、このような地震の発生数が増加傾向にある。アラバマ州からモンタナ州までを含む地域では、2009年には、マグニチュード3を超える地震が50回検知されたが、2010年には87回、2011年には134回に増加している。20世紀全体では6倍になった。

結論

 「天然ガスの採掘はやめるべきだと思うか?」という問いに対しては、「天然ガス採掘は、環境にも健康にも甚大な損害を与えるのに、なぜ生産量を増やさなければならないのか?」という根本的な問いを返すべきだ。

 フラッキングの技術は、今後も進化していくだろうが、フラッキングで天然ガスの生産量を増やせるとしても、化石燃料は有限だ。一方、再生可能エネルギー(太陽光や風力など)は枯渇しないし、環境への負担もはるかに少ない。技術的にも実用可能なレベルに達しているし、企業側でも利用する準備が整っている。今後、どちらのエネルギーを発展させ、利用していくべきかは明らかだ。

 再生可能エネルギーだけを用いた仕組みが可能であることは、様々な研究で証明されている。従って、環境に深刻な損害を与えるとわかっている化石燃料の採掘技術を進化させることは、ばかばかしいことだ。化石燃料の採掘に充てる資源や労力は、再生可能エネルギーの開発と実用に向けられるべきである。

 フラッキング推進派は、フラッキングには大きな利点があり、環境にやさしいとさえ主張している。しかし、その楽観的な主張の裏には、経済的な利益だけを追求する姿が隠されている。

 結局のところ、フラッキングの技術がどれほど進化しようと、その利益が損害を上回ることはない。フラッキングで得るものは、有限で環境に悪い化石燃料への人類の依存を、長引かせることだけだ。

 化石燃料に大きな可能性があると主張する前に、適切な研究や持続可能な政策、有効な規制によって問題点を解決することが、必要不可欠だ。事実に則した法規制やしっかりとした科学的根拠に基づいた政策を適用すること、何より健康と環境を守ることが、最も重要である。

(ラ・ホルナーダ・エコロヒカ216号)

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