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農地のダイズ化

土地の集中、土壌汚染、家族経営農業の減少
南米大陸では、大豆の栽培が毎年拡大している。生産者の大部分は多国籍企業で、大豆栽培から巨額の収益を得ている。しかし同時に、大豆栽培地域では、社会や環境、経済に、深刻な影響が生じている。

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foto: Taringa!

ダニエル・ガティ
Rel-UITA 2013/06/27

 大豆は主に、ヨーロッパや中国の市場に向けて生産されている。それらの地域では、大豆は、家畜の飼料や、自動車の燃料となるいわゆるバイオディーゼルの生産に利用されている。

 大豆栽培農地は、緑褐色の巨大な砂漠だ。その砂漠は、他の作物を押しのけて、拡大し続けてきた。他の作物の栽培は、人間のための食料になるという「心遣い」があることのほかにも、しばしば、ずっと多くの労働力を必要とし、より大きな付加価値を生み出すものだ。一方、農地の「ダイズ化」は、土地の集中と住民の立ち退きの増大という過程を伴うものである。

 栽培されている大豆の大部分は、遺伝子組み換え大豆であるため、栽培には農薬を必要とする。農薬の使用については、各州で、ごくわずかな検査を受けているだけであり、すでに集落全体が汚染されている。また、種子や大豆の特許を所有している企業と、農薬を製造販売している企業は、大抵は同じ企業だ。その頂点に、独占企業のモンサントが君臨している。

 国連食糧農業機関の2010年のデータによると、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ウルグアイにおける大豆の作付面積の合計は、5000万ヘクタールにのぼる。大豆の作付面積は、8年前には、ブラジルで30%、アルゼンチンで46%、ボリビアで55%、パラグアイで80%少なかった。ウルグアイでは、2002年以降1000%増加した。

 ノルウェー・バイオセーフティー・センターの2011年の報告書によると、2010年、パラグアイにおける耕作可能な土地の3分の2は、大豆栽培に充てられていた。アルゼンチンでは60%、ブラジルでは35%、ウルグアイでは30%、ボリビアでは25%であった。

 今年の6月は、世界の商品市場において、大豆価格のわずかな低下が見られたが、過去数年間は、上昇傾向にあると認識されてきた。2006年から2013年3月までの間、大豆1トンの価格は、213ドルから536ドルまで上昇し、2012年8月には、620ドルを超えるに至った。これほど激しく価格が上昇した商品は、他にはなかった。

 大豆の需要は、中国が最も多く、ヨーロッパがそれに続いており、引き続き増加している。過去10年では、大豆の需要は26%上昇した。

 ブラジルと米国は、大豆輸出国の中で、首位を争っており、アルゼンチンがそれに続いている。しかし、ブラジルは今年、8000万トンを生産する見通しであり、世界第1位の大豆輸出国になろうとしている。世界の大豆の80%が、この3カ国で生産されたものである。

大豆を取り巻く環境の多国籍化

 大豆生産のすべては、いくつかの多国籍企業に握られている。特筆に値するのはモンサントで、南米の大豆畑をモンサント一色に塗り替えてしまった。ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイで使用されている遺伝子組み換え種子は、モンサントの研究室で開発されたものだ。また同時に、遺伝子組み換え作物の栽培に使用される除草剤ラウンドアップも、モンサントの研究室で生まれたものである。

 ルイ・ドレフュス、カーギル、ADMのような多国籍企業もまた、大豆の輸出を支配している。一方、大豆の生産においては、いわゆる播種プールが取引を行っている。アルゼンチンの播種プールの投資家たちは、アルゼンチンとウルグアイにおいて、ブラジル人投資家たちはブラジルとパラグアイにおいて、優位を保っている。播種プールでは、生産者から土地を借りて大豆を生産する。生産者たちは、播種プールから受け取る金額が多額であるため、以前の栽培作物を放棄することを選んでしまう。また、播種プールによる大豆生産を支配しているのは、利益の最大化という基準であるため、それ以外のことが考慮されることはほとんどない。

 家族経営農業は、最も影響を受けた部門のひとつだ。ブラジルでは、家族経営農業は、毎年2%ずつ減少している。ダイズ化された面積よりも広い農地が、家族経営農業の減少によって失われている。これは、ウルグアイで起きていることと類似している。ウルグアイでは、酪農は、大豆栽培よりも大勢の熟練した労働者を雇用し、大抵は、家族単位で経営されていた。しかし現在は、大豆栽培にますます土地を譲っている。

土地の集中

 また同時に、ダイズ化は、土地の集中の過程に拍車をかける。土地の集中が最も進んでいるのはパラグアイで、2008年のデータによると、耕作可能な農地面積の85%が、2%の土地所有者の所有になっている。ブラジルがそれに続き、土地所有者の10%が、農業生産の85%を握っている。

 大豆の場合、栽培に広大な面積を必要とするため、土地の集中は、全体的な水準よりも、より一層進んでいる。ボリビアでは、2%の大豆生産者が、大豆栽培面積の半分以上を支配している。この数値は、アルゼンチンでもほぼ同様である。また、ウルグアイでは、1%の大豆生産者が、大豆栽培面積の35%を所有している。

明日の空腹より今日の金

 南米、とりわけアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイの3カ国における大豆生産の拡大は、現在の進歩主義政権に率いられた各州の明白な後ろ盾なしには、このような水準にまで達することは不可能だっただろう。この3カ国の財源は、大豆の生産と輸出による収入に、ますます依存している。

 アルゼンチンは、「農業食料アグリビジネスの戦略的プラン2010-2016」に見られるとおり、その傾向が最も顕著な国である。このプランは、大豆の作付面積を20%以上増加させることによって、3年以内に収穫高1億5000万トンを達成することを目指している。大豆の作付面積は、アルゼンチンのすべての作物の作付面積合計3500万ヘクタールのうち、すでに2000万ヘクタールに達している。

 大豆生産の拡大は、農業境界線の切り崩しを必要としてきた。それは、すでに深刻な環境問題(洪水、砂漠化、気候変動の加速化など)を引き起こしている森林破壊の進行と、土地の所有権争いによるものである。

 土地の所有権争いは、通常は、大企業と、農民や先住民の共同体の、直接対決を招くものであり、しばしば住民に死者が出る結果となる。パラグアイやブラジルでは、そのような重大な事例が発生しており、アルゼンチンでも、比較的小規模の事例が発生している。パラグアイでは、大豆の作付けの増大によって立ち退きを強いられた人数は、10年間で100万人を超えている。

 止めの一撃は、「大豆栽培モデル」が伴う環境への影響である。この「大豆栽培モデル」は、莫大な量の農薬を必要とする。農薬は通常、飛行機で大豆栽培農地に散布される。その農地が、居住地域に隣接している場合もある。

 2009年には、アルゼンチンのコルドバ、サンタフェ、ブエノスアイレスの3州だけで、2億リットルのグリフォサートが使用された。グリフォサートは、モンサントのラウンドアップの有効成分で、アルゼンチンで最も使用されている除草剤である。ブラジルでも、毎年10億リットルの農薬が、農地に散布されている。

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