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ウエスカ住民が火力発電所建設を拒否

ウエスカ村の住民が、メキシコ電力公社、州政府、警察の包囲に抵抗。
火力発電所建設の巨大プロジェクトは、スペインの多国籍企業エレクノール社とアベンゴア社が推進。
クアウトラ空港の滑走路があった45ヘクタールの土地への投資額は、16億ドルに達する見込み。

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写真:メキシコ電力公社が所有地に重機を搬入しようとしたため、見張りに立って警戒していた住民たちは、応援を頼んで計略を阻止するため、教会の鐘を鳴らした。警察がひきあげるまでの数分間、地域は緊張状態にあった (Cuartoscuro y Rubicela Morelos Cruz)

ルビセラ・モレーロス・クルス
La Jornada 2012/10/27

 モレーロス州ジェカピストラ基礎行政区のウエスカ村の住民たちは、建設作業再開の動きが見られるようになって3日目の26日、村に重機が搬入されることを阻止した。メキシコ電力公社(CFE)が、45ヘクタールの所有地に重機を搬入して、コンバインドサイクル発電型の火力発電所2基を建設しようとしていたからだ。この2基の火力発電所への燃料補給は、ポポカテペトル火山付近を横切る天然ガス・パイプラインによって行われる予定だ。

 モレーロス州政府(民主革命党(PRD)のグラコ・ラミレス・ガリード・アブレウが10月1日に知事に就任した)は、26日(金)の朝、4台のショベルカーと作業員の一団を警護するために、州警察の警察官数百人を再び送り込んだ。

 朝7時ごろ、州の警察官たちは、CFEの作業員と機械を現場に入れようとした。しかし、その土地から数メートルのところで見張りを続けていたウエスカ村の住民たちは、高速道路クアウトラ=ウエスカ線上で人の柵を作り、作業員と機械の通行を許さなかった。

 その朝は、約50人のウエスカ村の住民が、見張りに立って警戒していた。住民たちは、機動隊が高速道路で、車とショベルカーの車列を通行させているのを見て、援軍を頼むために、すぐに村の教会の鐘を鳴らした。

 地域のある住民によると、約15分間は緊張した状態だった。警察官たちは前進していた。しかし、村人たちの数は、ますます増えていった。

 警察官たちは、火曜日と同じように、もう少しで住民たちを立ち退かせるところであった。というのは、火曜日にも、数台の車に乗ってきた役人とCFE職員が現場に入ることができるように、警察官たちが住民を追い払ったからだ。しかし今回は、州警察の指揮官の一人が、警察官たちに退却するように命じた。

 ウエスカ村の農民の一人は次のように語った。今回彼らは、前回とは異なり、4台のショベルカーを搬入するつもりだった。そのため、ウエスカ村の住民は、火曜日よりも激しく抵抗した。その発電所の建築作業が再開されるのを阻止するためだった。

 また、モレーロス総合プロジェクトに反対する人々は、電話でのインタビューに次のように答えた。警察官たちが、住民たちを追い払うと脅したとき、住民たちは、もし火曜日のように再び力で住民を追い払うなら、今回はもう州議会に話し合いを求めたりはしない。今回求めるのは、弾圧を行うグラコ・ラミレス知事の辞職だ、と警告した。

 木曜日の朝、アレハンドロ・エストゥディージョ・フローレス自治会長が代表を務める、ウエスカ住民委員会の人々は、クエルナバカ市にあるモレーロス州議会本部へ出向き、モレーロス州政府がウエスカに配置した警察官を撤退させるため、州議会議員が介入するよう要請した。というのは、火曜日以降、警察官たちがウエスカ村を包囲し続けているからだ。

 これに関して、グラコ・ラミレス知事は、ウエスカ村で弾圧があったことを否定し、住民の抗議の背後にいるガス会社数社を非難した。

 水曜日、ジェカピストラ基礎行政区のこの村に、「私は132番目」運動のメンバーである何十人もの若者たちが到着した。火力発電所の設置に反対する農民たちを支援するためだ。若者たちは、発電所設置によって水がなくなり、農作物と環境と住民の健康に害が及ぶと主張している。

 抵抗運動の中にあるこの村では、今年7月6日、第1回目の全国学生集会が開催された。集会には、全国の進歩主義的な団体すべてが集合するよう招かれた。その目的は、ウエスカ村とメキシコを、フェリーペ・カルデロン政権が実施した新自由主義政策から守ること、そして、エンリケ・ペニャ・ニエトの強制を阻止することであった。

モレーロス総合プロジェクト

 メキシコ市から100キロメートルのところにあるウエスカ村の住民たちは、モレーロス総合プロジェクトに反対している。モレーロス総合プロジェクトとは、コンバインドサイクル発電型の火力発電所2基と、天然ガス・パイプラインを建設するプロジェクトだ。住民が反対している理由は、ウエスカ村が習慣と伝統を守ってきた村であるにもかかわらず、CFEもモレーロス州政府も、ウエスカ村の土地でやろうとしていることについて住民に知らせず、もちろん、発電所建設の許可を求めることもなかったからだ。

 今年のはじめ、住民たちは、プラスチック製造工場が建設されるかもしれないという噂を耳にするようになった。2月に入ると動きが活発になり、CFEのトラックが多数見られるようになった。そのため、住民たちは、CFEに買い取られた45ヘクタールの土地(以前はクアウトラ空港の滑走路だった)で、CFEとモレーロス州政府がやろうとしていることの情報を求めた。

 その土地は、ウエスカ村の家々や庭、地元の中学校から数メートルの場所にある。そのため、住民たちは、それが火力発電所の建設だと知り、ジェカピストラ基礎行政区政府、モレーロス州政府、CFEに情報を要求したが、回答はなかった。

 CFEは、ガスのパイプラインが通る予定のモレーロス州東部の複数の基礎行政区で、すでに農民たちの土地を買い上げていた。ウエスカ村の住民たちは、それらの基礎行政区の政府を通じて、火力発電所2基が、トラスカラ州やプエブラ州を横切るパイプラインに接続される予定であることを知った。

 発電所プロジェクトに反対する住民たちは、国、州、基礎行政区の各政府とCFEに書面を渡し、プロジェクトが村の環境に与える影響についての情報を開示するように求めた。反対住民は、デモ行進と集会を行い、発電所がもたらす利益と不利益について説明するよう要求した。

 しかし、CFEもモレーロス州政府(当時は国民行動党(PAN)のマルコ・アントニオ・アダメ・カスティージョが州知事であった)も、反対住民を買収しようとしただけだった。火力発電所を受け入れるよう、食料品や公共事業の実施で買収しようとしたのだ。

 CFEの変電所内における作業は継続していたが、公式な情報を手に入れられないことに疲れ果てた住民たちは、5月16日、45ヘクタールのCFE所有地へ続く高速道路クアウトラ=ウエスカ線を封鎖した。住民たちに情報を公開するよう、当局に強く要請するためだった。この時は、建設作業を中断させることに成功し、当局も、発電所が無害であることを住民たちに納得してもらうために、情報を提供することを申し出た。

 その日から10月23日まで、結果的には建設作業は休止していた。しかし、5月31日には、CFEが作業を再開しようとする出来事があった。両者は、国立大学の専門家を交えて、6月8日までに話し合いを行うことで、すでに合意していた。専門家は、発電所が村に何の害も与えないことを証明すると思われていた。それにもかかわらず、CFEは作業を再開しようとしたのだ。

 約束が守られなかったため、6月1日、ウエスカ村の住民たちは、断続的に国道メキシコ=イスカル・デ・マタモーロス線を封鎖した。これによって、CFEは再び作業を中断せざるを得なくなった。

 当時のモレーロス州経済開発局のラファエル・タマーヨ・フローレス長官は、8月31日、本紙のインタビューの中で、「モレーロス総合プロジェクトは、地域の反対があっても実現する」と述べた。

 タマーヨ・フローレス元長官は、この巨大プロジェクトが、CFEとスペインの多国籍企業エレクノール社およびアベンゴア社によって、投資額16億ドルで推進されていることを認めた。

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