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対反乱作戦とサパティスタの抵抗

ニール・ハービー
La Jornada 2012/12/31

 12月21日、チアパスの主要5都市で行われた、大勢のサパティスタの人々による静かな行進は、社会に二つのことを思い出させた。サパティスタ民族解放軍(EZLN)の組織能力と、その政治的な有効性である。サパタ主義は過去のことだと言っていた人々に対して、行進に参加した約4万人の先住民たちは、過去18年のあいだ、様々な政権が適用した対反乱政策の戦略が、失敗であったことを証明した。行進はまた、この18年のあいだに成長した若い男女の新メンバーの参加によって、運動の支持基盤が新しくなったことを示し、また、サパティスタの自治共同体に対するあらゆる攻撃にもかかわらず、彼らがその訴えを、絶やさずに保ち続けていることをも、証明することになった。サパティスタたちは、それ以前の場合と同様に、5都市における行進を実行するにあたって、行政機関の休日を選択した。そして、それどころか、マヤの新時代の始まりを祝い、同時に、先住民の集団的権利と自治のための戦いの、今日性と有効性を主張した。

 この行進は、サパティスタの組織能力を再認識させるものであるが、しかし、過去18年にわたって、彼らに攻撃が加えられてきたという事実は、忘れてはならない重要なことである。メキシコ軍や様々な準軍事組織は、1995年1月以降実行されている対反乱政策の枠組みの中で、サパティスタの支持基盤を消耗させ、共同体を分裂させるために適した状況を作り出し、恐怖の種を植えつけることを試みてきたため、サパタ主義は、それらのものから身を守らなければならなかった。サパティスタが12月21日に示した組織化の水準の高さもまた、抵抗の20年近い年月の中で、敵の挑発に乗ることなく、自治の体制を作り続けていくために、示されてきたものである。

 従って、準軍事組織のグループが、引き続きチアパス州内で活動していることは、気がかりなことである。2012年の1年間、サパティスタの5つの「善き統治評議会」(JBG)は、武装グループによる攻撃への非難を、数多く伝えた。それらの武装グループは、サパティスタから土地を取り上げたり、共同体の労働による収穫物を奪おうとするものだ。最近の例では、「発展と平和と正義」というグループのメンバーが、チアパス州北部のラ・ディグニダー基礎自治区(公式にはサバニージャ基礎行政区)にあるヌエボ・ポブラード・コマンダンテ・アベル共同体(以下、アベル共同体)を攻撃するということがあった。

 「アベル共同体への連帯と調査のキャラバン」の声明によれば、9月6日、55人の武装した侵略者たちがアベル共同体に到着し、発砲して、サパティスタたちを攻撃した。この侵略者グループは、武器でサパティスタたちを脅すために、川岸にキャンプと塹壕を建設して拠点とした。数日のうちに、このグループの人数は150人に増え、アベル共同体の147ヘクタールの土地の半分を占拠した。キャラバンのオブザーバーが証言したところによると、発砲された弾丸は、自治小学校や協同組合の店舗の壁まで到達していた。この侵略者たちと対決する代わりに、サパティスタの支持基盤の大部分の人々は土地を離れ、山中を2、3日歩いた後、サン・マルコス共同体に避難場所を見つけた。この期間、女性や子供たちは病気や飢えに苦しみ、一方、共同体に残ったサパティスタたちは、トウモロコシ畑に作業に出ることができなかった。ウニオン・イダルゴ共同体でも、4家族が同様の状況を体験した。制度的革命党(PRI)を支持するグループに脅迫され、共同体を出ていかなければならなかったのだ。このような話は、90年代、特に、当時のエルネスト・セディージョ大統領が命じた1995年2月9日の軍による攻撃のあとの数週間は、非常に多く発生していた。こうした攻撃がまだ頻繁に発生しているという事実は、関心を集めるべきことである。というのは、関心が集まれば、攻撃は抑制され、そのかわりに、サン・アンドレス合意を実行に移すための活動が開始されるようになるからである。

 JBGによる成果の一つは、争いごとを解決するための自治的な仕組みを作り上げたことだと言えよう。サパティスタの自治に関する様々な研究は、こうした仕組みの重要性を立証している。というのは、この仕組みによって、サパティスタ以外のグループも、費用をかけず、同じ共同体内の、同じ社会経済的な状況にある人々によって、争いごとを解決することができるようになるからだ。サパティスタたちも、サパティスタの組織に参加していない家族たちの土地に接近することの必要性を認識している。2012年5月のアベル共同体の設立自体、その例であった。移転以前はサン・パトリシオと呼ばれていた共同体は、別の場所に移ることで、準軍事組織との大きな紛争を避けることを決定したのだ。ロベルト・バリオス自治区のJBGが9月11日の声明で説明しているように、移転の決定は、共同体のメンバーが、彼ら自身の土地を持つためのものであった。なぜなら、彼らにも生きる権利があるからだ。

 しかし、すでに述べてきたように、サパティスタの支持基盤を消耗させようという政治的目的のために、攻撃は続いている。それにもかかわらず、チアパス北部のJBGのメンバーたちが言っているように、抵抗は続いている。「悪い政府が、侵略しようとして行っていることは、我々を屈服させるための、彼らの戦争と侵略のやり方である。我々は戦いを諦めないし、決して屈することはない。彼らは、我々が屈すると思っている。しかし我々は屈しない。我々の戦いは、土地と民族のための戦いなのだ」

 サパティスタたちは、政府の皮相な支援政策を受け入れず、各共同体の社会的、経済的、政治的必要性に応じた、様々な自治プロジェクトを実行に移すことが、可能であることを証明してきた。だからこそ、代々の政府は、サパティスタを弾圧し、その規模を縮小させ、分裂させ、懐柔することを試みたり、または、それらすべてが不可能と知ると、サパティスタの存在を単に無視しようとしてきた。この現実に対して、先日の行進は、先住民の自治の活力を知らしめるものとなった。そして、その活力は、数々の攻撃にもかかわらず、チアパス、そしてメキシコにおける広範な民衆の支持によって、先住民のひとつのあり方として存在し続け、かつ、世界にとっては、ひとつの実例として、存在し続けているのだ。

* 筆者のニール・ハービーはニューメキシコ州立大学の教授で研究者。「チアパスの反逆」の著者。

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