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ナイジェリア:ボコ・ハラムという名の麻薬カルテル

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グアディ・カルボ
ALAI, America Latina en Movimiento 2016/05/20

 この14年間、ナイジェリア北部では、イスラム過激派「ボコ・ハラム」による殺戮とテロが続いており、2014年以降は、カメルーンやニジェール、チャド、マリなどの近隣諸国におけるテロも増加した。ナイジェリア北東部チボクの学校で、300人以上の女子生徒がボコ・ハラムに誘拐された事件以降は、世界中のメディアがボコ・ハラムを取り上げるようになった。この事件後、女子生徒の解放を求める運動が、取って付けたように世界中に広がったが、成果は上がらなかった。

 2015年3月、ボコ・ハラムのリーダー、アブバカル・シェカウは、過激派組織「イスラム国」(IS)の設立者で指導者のアブバクル・バグダディに、忠誠(バイア)を誓うことを表明した。

 当初、ボコ・ハラムのイスラム国への接近は、メディアに対して虚勢を張る傾向の強いシェカウの奇行のひとつに過ぎないと思われていた。

 しかし、この新たな同盟関係は、世界中のメディアの注目だけでなく、ボコ・ハラムへの加入を希望するナイジェリアの若者たちの注目も、集めるきっかけになった。この二つのテロ組織は、アフガニスタン、イラク、パキスタン、シリア、リビア、ソマリア、フィリピンなどの活動地域でも、若者たちの関心を集めている。この現象は、メディアやソーシャル・ネットワークの中で、テロ組織の同盟そのものよりも大きく取り上げられた。

 最近では、両テロ組織の結びつきは、宗教的、軍事的、メディア的なものというより、利害関係によるものだと言われている。

 今年3月中旬、ナイジェリア麻薬取締局(NDLEA)は、ナイジェリア南部デルタ州の都市アサバで、メタンフェタミン(覚せい剤)の大規模な製造工場を摘発した。逮捕された8人のうち、4人はナイジェリア人、残りの4人はメキシコ人だった。

 この製造工場は、週4トンのメタンフェタミンを製造する能力があった。メタンフェタミンの価格は、ナイジェリアでは1キログラム6000ドル(約66万円)だが、最大の密売先であるアジアでは1キログラム30万ドル(約3300万円)になることを考えると、その規模の大きさがわかる。

 また、この工場では、合法的な入手が困難なエフェドリン(メタンフェタミンの原料)以外の原料を用いて、メタンフェタミンを製造することが可能だった。麻薬の密造工場が摘発されたケースは他にもあったが、この工場の製造技術は、最も高度なものだった。

 トランスペアレンシー・インターナショナルの2015年腐敗認識指数によると、ナイジェリアは、調査対象168カ国のうち、32番目に汚職度の高い国となっている。ナイジェリアの麻薬組織は、アフリカ大陸で最も活発に活動する組織にまで成長したが、この成長と汚職度の高さを結びつけて考えることは、難しいことではない。ブラジルでは、胃の中にコカインを隠し持つナイジェリア人が逮捕されるケースが、急増している。

 テロ組織のボコ・ハラムは、この状況を見逃さず、麻薬の密売が、誘拐や人身売買、武器密輸、恐喝と同様に、資金源になることを素早く理解した。

 ボコ・ハラムのメンバーは、ナイジェリア南部の都市カラバルの河川港を利用する複数の麻薬組織とつながりがある。この地域は、石油資源が非常に豊富な地域であると共に、石油による環境汚染が深刻な地域でもある。

 また、ボコ・ハラムは、コートジボワールの港湾都市サン・ペドロやアビジャンで活動する麻薬組織や密輸業者とも、つながりを持っている。コートジボワールでは、3月13日、観光地グランバッサムで16人の死者を出すテロが起き、イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)が犯行声明を出した。ボコ・ハラムとコートジボワールの麻薬組織のつながりを考えると、このテロは、この地に金脈を持つボコ・ハラムに対する、AQIMの報復だったという疑惑が起きる。

 ボコ・ハラムは、2015年以降、近隣諸国に勢力を拡大し続けている。とりわけチャドでは、チャド湖の多数の島々を占領した。

 コロンビアやブラジルの麻薬組織とボコ・ハラムのつながりについても、耳にすることが多くなった。麻薬組織は、ギニア湾から地中海へ至るルートを確保することに、特に関心を持っている。イスラム国が支配するリビアのスルト港やミスラタ港など、地中海に面した港から、ヨーロッパ方面に「商品」を送るためだ。

 麻薬組織とテロ組織が手を結ぶことで、麻薬を陸上輸送する一団は、南米の麻薬組織の船や飛行機が着くギニア湾からリビアの港までの5000キロメートルの道のりを、ボコ・ハラムとイスラム国のメンバーによって守られて進むことができる。

資金調達の多様化

 南米から来るコカインは、ギニア湾沿岸の様々な港から入り、西ヨーロッパや極東へと運ばれる。麻薬を輸送する一団は、テロ組織のメンバーに守られて、コカインだけでなく、合成麻薬も運んでいる。それらの合成麻薬の多くは、今年3月、ニカラグアの情報機関がアサバ市で摘発した工場と類似の製造工場で、製造されたものだ。

 アフリカで活動する麻薬組織は、アンゴラ、カーボベルデ、タンザニア、ケニア、ウガンダ、南アフリカなどを通る別のルートも利用しており、これらのルートにおいても、ボコ・ハラムは無関係ではない。

 アフリカは、世界中の様々な地域に麻薬を運ぶブローカーになった。そして、その利益は、アフリカのテロ組織の活動資金になっている。

 タンザニアは、世界のヘロイン生産量の95%を占めるアフガニスタンのヘロインや、黄金の三角地帯と呼ばれるタイ、ラオス、ミャンマーで生産されるヘロインの、最大の入り口となっている。

 また、広大なサヘル地域やマグレブ地域では、ボコ・ハラムとAQIMが、ヨーロッパの主要都市へ向けた麻薬の密輸を援護するために、かつては共に活動していた。

 ボコ・ハラムやアルカイダ、イスラム国のようなテロ組織は、主要な「スポンサー」であるサウジアラビアやカタール、トルコ、CIAなどの西側情報機関が国際社会に監視されている現在、これまで以上に資金調達の手段を必要としている。サラフィー主義が存続するためには、資金調達の分野を拡大し続ける必要がある。

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