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労働改革は、カルデロン大統領の時限爆弾

エドゥアルド・イバラ・アギレ
Rebelion 2012/09/25

 労働力のコストを下げることは、30年前からの最も堅固な傾向だ。30年前、メキシコにおいて、より覇権主義的な新しい経済的、社会的方針が取られるようになった。その方針とは野蛮な資本主義のことで、通常、新自由主義と呼ばれるものだ。

 しかし、(米国、スペイン、日本、英国、フランスなどの)多国籍企業と、それらの企業のメキシコ人経営者たちは、並外れて貪欲であり、いまだ満足せず、フォーブズ誌の長者番付にもっと多くの名を連ねることを切望し、要求している。フォーブズ誌はメキシコ版長者番付を作成中だ。

 利他的な目標として描かれているこの新自由主義的傾向の中で、経済協力開発機構(OECD)は、これらの多国籍企業やその経営者たちを援助している。OECDの事務総長を務めているホセ・アンヘル・グリアは、「従属のアンヘル(天使)」とも呼ばれ、政府系開発銀行ナショナル・フィナンシエラ総裁の地位を、異例の若さで辞任したことでも有名だ。そしてOECDは、フェリーペ・カルデロンの労働改革特別法案が議会で可決されたら、メキシコは、世界で最も生産力のある国々のリストで、順位を50位あげるだろうと断言している。

 確かに、OECDの言うことは正しい。しかし、OECDはこれまで常に、労働を不安定化することと、一世紀もの間に獲得してきた労働者の権利の良い部分を廃止することに、あまりに関心を持ちすぎてきた。それは今回も同様であり、それがメキシコにもたらす広範な社会的費用を無視している。

 例を挙げよう。「ラ・ホルナーダ」紙のロベルト・ゴンサーレス・アマドール記者は、その記事の中で、世界最大の市場である米国の市場において、メキシコの工業製品が、中国製品に取って代わりつつある、と書いた。大蔵省はこれを大喜びで吹聴し、「メキシコ経済の強さの証明」であると述べた。

 しかし、この経済専門の記者は、メキシコの労働者たちにとって悪いニュースは、この新たな繁栄が、労働者の賃金の犠牲の上に成り立っていることだ、と述べている。また、ここ10年で、中国の製造業部門の平均賃金は4倍に増えたが、メキシコでは据え置きのままであることも示している。

 国際労働機関(ILO)とメキシコ地理統計局(INEGI)のデータによると、2002年には、メキシコの製造業部門の平均賃金は、ドル換算した中国の同部門平均賃金と比べ、237.9%も高かった。しかし、この顕著な差は消えうせた。なぜなら、2011年にはその差はわずか7.3%になり、引き続き減少しているからだ。ところで、売り手寡占の大手メディアに出演して、中華人民共和国の驚くべき経済、金融、技術力の根源を、「奴隷労働」に由来するものだと単純化している人々は、今すぐその草稿を見直す必要がある。

 幸いなことに、カルデロン政権には、大資本企業の利益を桁外れに優遇するための時間が、あと67日しか残されていない。しかし彼らは、生産力を大々的に増やすためのプロジェクトのために、非常な努力をしている。このプロジェクトは、労働者の賃金と社会保障給付を犠牲にして行われるが、これらは日々悪化の一途をたどっている。とりわけ、若年層においては、低賃金の仕事がほとんどであり、社会保障サービスもない。さらには、収入はチップだけで、賃金はないという、現在広まっている労働形態を一般化することも、このプロジェクトの犠牲である。

 法律家であり、経済学者であり、政府の行政官であるカルデロン大統領は、異常なほど費用のかかっている官僚組織を効率化することには、何ひとつ重要な措置を取らない。例えば、国税庁における、納税者用の電子署名登録システムの更新・取消しの手続きのために、筆者自身が5回、筆者の税理士であるアルベルト・カスティージョ・トレス氏が2回、事務所に赴いた。半年に一度の手続きのために、合計7回だ!

 この労働改革については、すでに街頭(メキシコ市の独立記念塔天使像から中央広場までの行進)や、工場(モレーロス州ヒウテペック基礎行政区の日産自動車)において、抗議活動が行われている。この抗議は、現政権最後の改革に着手し、危険性の高い大きな政治的費用をペニャ・ニエト次期政権に残す、無責任な厚かましさへの抗議である。

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