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最も価値あるものの浪費

マリア・ロペス・パニアグア
ALAI, America Latina en Movimiento 2013/02/01

 世界では、10億人が飢えに苦しんでいる。しかし、毎年生産される食料のほぼ半分は、ゴミ箱に捨てられている。食料生産の合計40億トンのうち、約20億トンはいずれの家庭にも行き付かず、ましてや、栄養不良に苦しむ何百万人もの人々の食卓には、決して届かない。

 国連食糧農業機関(FAO)の世界の飢餓に関する最新の発表は、静かな危機の真実を明らかにしている。しかし、その危機については、かろうじていくつかのニュースが取り上げただけで、国際通貨基金も世界銀行も関心がない。専門家によると、このような数字は、過剰生産と、侵略的で無規制の資源開発の結果である。中でも、水資源について特筆することは重要で、というのは、水が不足しているためにそれが貴重な財産となっている場所において、消費されない作物の栽培のために、水が使われているからだ。

 しかし、同じような浪費の問題は、生産に関するこれらの問題だけにはとどまらない。とりわけ、最も豊かな社会における教育の問題がある。貪欲な大量消費志向の浸透は、各家庭の節制を何十年もの間すり抜け、バーゲンセールや販売戦略を次々と打ち出し、そのために、私たちは実際に必要なものより多くのものを買ってしまうことになる。農産食品の多国籍独占企業は、食料の生産・消費モデルを押しつけ、各国政府や国際機関もそれを支持している。同様に、大手スーパーマーケットも、消費期限の厳密な規則を適用している。その規則は、現実に即していない場合が多く、それにより、消費するのに全く問題のない食料を、ごみ箱に捨てなければならない。

 ここ数十年のあいだに起こった多くの食料危機がきっかけとなり、食料の浪費をなくすための活動が多数実施されるようになった。国連食糧農業機関は、食料生産の全過程における食料の浪費を減らすために、いくつかの団体と共にキャンペーンを開始した。そのキャンペーンは、実際には消費者、小売業、ホテル部門に向けられている。ホテル部門は、膨大な量の食料を浪費している張本人だ。浪費の大部分は、「バイキング」その他の、食料の強制的な購入・消費を後押しする形式によるものだ。欧州連合(EU)も食料の浪費を抑制するために、「食料の無駄をなくそう」キャンペーンを開始した。

 それと並行して、改善の促進を望むグループや少人数の団体によって、小規模の活動が多数考え出された。その一例は、「フィーディング・サラゴサ」の活動で、農家やスーパーマーケットの余剰食物で、1000人分の無料の食事を準備するというものだ。各フードバンクも、余った食物の多くを公平に分配するための最も重要な組織として、引き続き活動している。ラテンアメリカでは、多くの国々がこうしたフードバンクの役割を強化する対策を取っている。例えばメキシコには、メキシコ・フードバンク協会という効果的な機関があり、「飢餓撲滅キャンペーン」の下で、食料という最も基本的な財産を入手できない人々に、食料を分配している。

 食料の浪費に関する数値の大きさは、世界の食料生産が史上最大量に達したことを考えると、一層衝撃的だ。今日では歴史上のどの時代よりも多くの食料を生産しているが、それでもなお、この産業は、世界の人々を食べさせ、全世界的に飢餓をなくすという緊急の使命を果たすことに失敗している。

 幸運にも、これは告発可能な問題であり、また、各家庭をはじめ、生産・流通など全レベルにおいて、ある程度までは改善していくことができる問題だ。その第一歩は、食料に対する認識(取るに足りないことであり、すべての人々が豊富に入手できる)を排除し、意識改革を行うことだ。そして次の段階は、食料という最も基本的なものにおける、これほど大きな不平等を減らすために、前述の新しい数々の活動に対する寛容と連帯を強めていくことである。

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