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リオス・モント裁判、無処罰か正義か

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foto:teleSUR

ランディ・サボリト・モラ
Prensa Latina 2013/05/31

 グアテマラの憲法裁判所が、元将軍で独裁者であったエフライン・リオス・モントに対する懲役80年の判決を取り消すよう命じてからというもの、無処罰と正義の攻防は、果てしなく続いているようである。

 数千人ものグアテマラの人々が、憲法裁の判決に抗議して行進し、多数の団体や機関が、不同意を表明したが、憲法裁第一法廷は、5月27日、リオス・モントに対する有罪判決の取り消しを承認した。

 今年の3月19日から5月10日まで、最高裁の重大犯罪A法廷で行われた裁判では、リオス・モントに対し、事実上の大統領として政権を握っていた1982年から1983年の間に、先住民1771人を殺害した事件の首謀者として、有罪判決が下された。

 リオス・モントに対する裁判は、ジェノサイドと人道犯罪に対する審理を行う法廷が決定するまで、一時休止となる。

 重大犯罪A法廷は、リオス・モントに対する刑事訴訟の審理を継続することを回避した。

 そのため、憲法裁第一法廷の裁判官は、審理を担当する最高裁の裁判官を任命する必要がある。

 憲法裁第一法廷は、公判の中で、4月19日以降に出された判決を無効とすることを決定した。そのため、リオス・モントが事実上の大統領であった時代に諜報機関の責任者であったホセ・ロドリゲスも、無罪となった。

 「リオス・モントに対する判決は、グアテマラの最も権威ある裁判所によって取り消されたところである。大企業家たちや、ジェノサイドを行った軍部と関連のあるグループが、最高裁の決定を拒否し、不安をあおろうとしたことが、背景にある」と、正義と和解のための協会(AJR)は訴えた。

 この訴えは、リオス・モント裁判の原告側の団体のひとつであるAJRが、国連先住民問題に関する常設フォーラムに発表した声明の中の記述である。

 AJRは、この声明の中で、リオス・モント裁判に関し、「我々は、過去12年間、証拠や証言の準備をし、あらゆる種類の障害を乗り越えてきた。そして今、前進し始めたときになって、訴訟プロセスの合法性を問題にしてくる」と述べた。

 また、リゴベルタ・メンチュー基金は、「グアテマラと世界の人々への公開状」を発表し、「憲法裁の判決は、グアテマラの司法制度を著しく侵害し、ひどい前例を築いた。この前例のために、私たちは、グアテマラでは無処罰主義のために、ジェノサイドや人道犯罪を裁くことができないと、主張するに至っている」と述べた。

 また、同公開状の中において、司法制度は依然として、グアテマラの軍部、財界、政界、メディア界などの、間違いを改めようとしない最も強情な権力者たちによって牛耳られている、と指摘した。この基金は、1992年にノーベル平和賞を受賞したグアテマラ人女性、リゴベルタ・メンチューが中心となって活動する組織である。

 同基金は公開状の中で、「私たちマヤ人は千年の記憶を持っており、私たちの歴史を忘れることはない」と述べ、戦いを続けていくことや、グアテマラでジェノサイドがあったことを証明する専門的、科学的、法的証拠を保存していくことを明言した。

 国際法律家委員会(CIJ)は、プレスリリースの中で、この憲法裁の判決は、内戦時代(1960-1996年)に起こった人権侵害に関して、グアテマラにおける正義の模索の後退を意味している、と述べている。

 また、CIJはプレスリリースの中で、次のように非難している。「憲法裁は、リオス・モントを再び庇護した。今回のそれは、被害者であるイシルの人々が正義を求める権利に深刻な打撃を与え、グアテマラにおける無処罰の悪化を引き起こすことになる。」 「憲法裁はこの判決で、グアテマラ国民に誤ったメッセージを発すると共に、加害者側に一層大きな力を与えている」

 人権侵害に反対するグループ「イホス・グアテマラ」は、声明の中で、「憲法裁は、無処罰帝国への逆戻りを、身をもって示した」と指摘し、憲法裁による判決取り消しに関して、「判決までの数日間、寡頭支配層と軍部は同盟して、心理戦、脅迫、工作活動に訴えていた」と述べた。

 共同声明「最高裁の違法判決は法治国家への攻撃である」に署名したグアテマラの多数の市民団体は、憲法裁のアレハンドロ・マルドナード、エクトル・ペレス、ロベルト・モリーナ裁判官が下した判決を、違法であると見なしている。この3人の裁判官は、リオス・モントの弁護士であるフランシスコ・ガルシアが提出した告訴状を、有効であると見なした。

 しかし、共同声明に署名した団体は、この判決が法律と判例で定められていることに矛盾している、と指摘している。というのは、司法プロセスを、すでに結審している段階以前まで戻すことはできないということが、法律で定められているからだ。その一方で、憲法裁は今回、重大犯罪A法廷による司法手続きについて、後になって、時機を失してから、その正否の解釈を行っているのである。

 「司法制度を信じ、断固とした判断を求めて戦ってきた被害者や遺族たちは、この判決によって、はかり知れないほど大きな不正義を感じている。」 「この判決は、『無処罰』としか名付けようがない。この判決はまた、国全体の利益よりも個人的利益を優先する権力者グループの干渉について、我々が告発してきた内容を、追認するものでもある」と、共同声明は述べている。

 この共同声明には、キチェ北部総合的発展のための被害者の会、イシル地方マヤ自治組織、先住民女性抵抗の声協会、左翼フェミニスト女性団体、マドリッドのグアテマラ人権委員会、グアテマラキリスト教青年協会、高原地方農村委員会、ノーモア・ジェノサイド連携、農村連帯委員会、グアテマラ修道士会議など、多数の団体が署名している。

 ナバ、コツァル、チャフルの三つの基礎行政区は、いわゆるイシル三角地帯をなしており、この地域で、リオス・モントの事実上の大統領時代に、弾圧によって多数の虐殺が行われたことは、検察庁がすでに確認している。

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