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メキシコ大統領選挙 米国も注目

 米ワシントンポスト紙のメキシコ特派員、アン・マリー・オコーナー氏によると、メキシコにおいて、政党間の公正で開かれた選挙による、真の民主主義が実現されるようになったのは、ここ数十年のことであり、現在は、強大な犯罪組織と政府が激しく衝突していることや、中産階級を増やして競争力を強化することを目指していることから、今回の選挙は、重要なものとなる。

 しかし、なぜメキシコの大統領選が、米国にとって重要なのか? オコーナー氏は、隣国の選挙戦について、同紙の読者に質問を投げかけ、自ら答えた。

 日曜日に発売された記事における分析は、次のとおりである。

 「米国は、メキシコの麻薬カルテルとの戦いにおいて、その責任を共有している。米国は、世界で最も多くの違法な麻薬消費者を抱えており、それらの麻薬の大部分は、メキシコ経由で入ってくる。また、米国からメキシコへ送られる金と武器は、メキシコ国内での暴力の原因となっている。米国とメキシコは、商業、工業、観光においても、密接につながっている。米国人が海外旅行で訪れる目的地として、最も多いのは、メキシコである。文化も共有している。約1200万人のメキシコ人が、米国に住んでいて、移民問題は、合法違法に関わらず、両国にとっての課題である」

有力な候補者は誰か?

 大統領選の行方は、あらゆる意味において、現大統領フェリーペ・カルデロン率いる与党の政策に、合否の判決を下すものとなる。

 「エンリケ・ペニャ・ニエトは、PRI(制度的革命党)のニューフェースだ。旧態依然とした、専制的な腐敗政治がたびたび指摘されてきたPRIは、カルデロン現大統領の前のビセンテ・フォックス大統領が、2000年に政権をとるまで、70年間与党の座にあった。エンリケ・ペニャ・ニエトは45歳、ハンサムでテレビ映りがよく立派に見えるが、謎も多く持っている(人生で影響を受けた3冊の本の題名を、正確に挙げられなかったことは、有名だ)。大統領として、どのように国を治めるのか、21世紀においてメキシコが必要とする、妥協のない改革に、本当に取り組むのか、または、PRIが再び、恩顧主義と強要による政治を行うことを、容認するのか、実際、誰にもわからない。元メキシコ州知事であるペニャ・ニエトは、結果に重点を置いた、非常に有能な政府を率いることを約束している。」

 「アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールは59歳で、元メキシコ市長、メキシコの左派の顔で、PRD(民主革命党)から出馬している。2006年の大統領選では、1%未満の僅差で、フェリーペ・カルデロン現大統領に敗れた。ロペス・オブラドールは、カルデロン側が、不正行為を行ったと抗議した。今回の選挙戦で、ロペス・オブラドール(そのイニシャルから、AMLOと呼ばれている)は、対決ではなく、愛に重点を置いた政策を行う、と述べている。また、6%の経済成長を約束し、そのために、貧困対策や、メキシコの競争力を奪っている大企業独占を終わらせるための政策を強化する、と表明している」

 「ホセフィーナ・バスケス・モタは51歳、カルデロン大統領率いる与党PAN(国民行動党)から出馬している。これは、ある意味で挑戦だ。というのは、有権者は、カルデロン大統領とPANに、うんざりしているように見えるからだ。バスケス・モタは、カルデロン政権で、教育大臣を務めた。好結果はほとんど残せず、教員組合とその強力な組合長に牛耳られているメキシコの教育行政のまずさを、改善することができなかった。選挙戦で現実に首位を争う、初めての女性であるバスケス・モタのチラシには、「(彼女は今までと、他の人と)違う」と書かれている。しかし、彼女の政策の大部分は、カルデロン大統領の政策を受け継いでいる」

世論調査が示していることは?

 ワシントンポスト紙によると、4月末に選挙戦が始まって以来、ペニャ・ニエトは、他の候補者に2桁ポイントの差をつけて、1位を維持している。バスケス・モタとロペス・オブラドールは、数字上ではほぼ同率で2位だが、1位とは、20ポイントの差がついている。大部分の専門家は、特別大きなスキャンダルか、致命的な失敗でもない限り、対立候補が最後の追い上げを見せても、ペニャ・ニエトに勝つことは難しい、と見ている。また、ロペス・オブラドールは、この世論調査について、大手マスコミの利益のために、調査結果が不正に操作されたが、現実には、ペニャ・ニエトの支持率に近づきつつあると主張した。

選挙はどのように行われるか?

 メキシコの大統領の任期は6年間、1回のみで、再選は禁止されている。7月1日に、有権者は、投票用紙に×印を記入して投票する。投票所での混乱や設備等の不備がなければ、有権者は、当日夜には、勝者は誰かを知ることになる。新大統領は、12月1日に就任となる。

今回の選挙における麻薬戦争の意味は?

 「それほど大きくはない。ロペス・オブラドールは、就任後、最初の6カ月以内に、麻薬組織に対抗する作戦のために配置した軍隊を、撤退させることを約束している。バスケス・モタは、麻薬カルテルの幹部たちに狙いを定めた、現在のカルデロン大統領の戦略を、米国の支援の下に継続すると述べた。カルデロン大統領は、いくつかの麻薬カルテルの弱体化には成功したが、シナロア・カルテルのボス、ホアキン・グスマン通称エル・チャポのように、勢力を維持しているものもある。これまでに、約5万人のメキシコ人が、麻薬カルテルの抗争で死亡している。ペニャ・ニエトは、麻薬の密売自体よりも、その他の犯罪、例えば殺人、恐喝、誘拐、強盗など、一般市民に影響する犯罪について、より危惧していると述べた。この状況に立ち向かうために、ペニャ・ニエトは、最も暴力的な犯罪組織ロス・セタスと、直接対決しなければならない」と、ポスト紙は結んだ。

シエンプレ2012年5月28日

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