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グルーポ・メヒコ:鉱山労働者の不審死

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写真:グルーポ・メヒコが所有するブエナ・ビスタ・デル・コブレ鉱山 (Profepa)

ミルトン・マルティネス
Proceso 2017/03/01

 ミゲル・エドガルド・サラサール・カスティージョさん(26歳)は、メキシコの鉱山大手グルーポ・メヒコが所有するブエナ・ビスタ・デル・コブレ鉱山(ソノーラ州)で、不審な死を遂げた。ミゲルさんの遺族は、メキシコ政府に、真実を明らかにすることを求めている。

 ミゲルさんは、死亡する2日前の2月19日、グルーポ・メヒコが労働者に実施している定期健康診断で、まったく問題がないという結果を受け取っていた。

 しかし、48時間後の2月21日、ミゲルさんは、「心筋梗塞」で亡くなった。場所は、鉱山とモリブデン製造所の間にある第2選鉱所の施設の中だった。第2選鉱所では、鉱山業界の用語でNaSHと呼ばれる硫酸ナトリウムの試薬が利用されていた。

 その場に居合わせた人たち(企業側の報復を恐れて匿名)によると、ミゲルさんが倒れたときに最初に介抱した労働者は、第2選鉱所内の硫化水素ガスの中毒によって、呼吸停止になり、意識を失った。

 ミゲルさんは、亡くなった2月21日の数日前、鉱山の中間管理職が全員新しく交代したことが心配だと、家族に話していた。土から鉱物を取り出すために、危険な化学物質を利用する部門の管理職が代わったことを、特に心配していた。

 さらに、ミゲルさんが亡くなった事故の前にも、死亡者こそ出なかったが、複数の事故が起こっていた。これまでにミゲルさんの遺族が調べたところでは、過去一週間に3件の事故があったことが確実であり、そのほかにも、まだ数件の事故があった可能性もある。

 ミゲルさんの義兄のエクトル・アルバラードさんによると、ソノーラ州検察庁は、ミゲルさんの遺体を検死に回し、その結果を受け取っただけで、鉱山内部を調べることさえしなかった。

 エクトルさんは、「労働者の中には、私たち遺族に連帯し、調査を続けるように励ましてくれる人たちもいます。彼ら自身も、鉱山での事故を恐れているのです」と語った。

遺族が国に支援を要請

 エクトルさんと家族は、「ミゲルさんの死は、安全に関するルールが守られていなかったために起こった」という内容の手紙を書き、労働・社会保障省(STPS)に送り、支援を要請した。

 手紙では、連邦検察庁(PGR)が調書を取り寄せることと、連邦検察庁がソノーラ州検察庁に、ミゲルさんの遺体の再解剖と、死因となった事故についての詳細な調査を命じることを求めている。

 「州検察庁は、グルーポ・メヒコとやり合うには、あまりに弱小だということを、私たちはわかっています。だから、連邦検察庁と国の労働・社会福祉省と大統領に支援を要請したのです。しかし、鉱山会社の力は、信じられないほど大きいものです。鉱山会社は、検察当局に強大な力をふるうことができ、調査をやめさせることもできるのです」と、エクトルさんは悲しそうに語った。

 また、ミゲルさんの遺族は、公共行政省(SFP)に、ミゲルさんの件を最初に調査した検察官数人を訴えた。おそらく、検察官は、「鉱山会社を守る」方向で動いたからだ。ミゲルさんは、ソノーラ州アリスペ出身で、プロの電気工だった。もうすぐ結婚するつもりだと、家族に話していた。

グルーポ・メヒコの黒い歴史

 グルーポ・メヒコは、鉱物の採掘・加工過程における安全管理の欠如から、過去数十年間に、複数の重大な事故を起こしている。

 メキシコ鉱山労働組合第65支部の調査によると、2010年6月6日以降、グルーポ・メヒコのブエナ・ビスタ・デル・コブレ鉱山では、死亡者が出た事故が20件起きている。

 「この鉱山は時限爆弾だ」と、鉱山労働組合のアントニオ・ナバレテさんは述べた。

 2014年8月6日、この鉱山で排水と選鉱の処理中に、4000万リットルの有害な化学物質および重金属がソノーラ川とバカヌチ川に流出し、河川沿岸の山間にあるソノーラ州の7つの村の住民2万2000人が、被害を受けた。

 当時の環境天然資源省のフアン・ホセ・ゲラ・アブード大臣は、この事故を「メキシコの鉱業における近代以降最悪の大惨事」と形容した。

 現在でも、この事故の影響は残っている。

 グルーポ・メヒコは、コアウイラ州のパスタ・デ・コンチョス炭鉱でも、多数の死亡者を出す重大な事故を起こした。

 この悲惨な事故は、2006年2月19日に起こった。高濃度のメタンガスが引き起こした爆発のために、65人の死者を出した。

 死亡した鉱山労働者は、全長1.6キロメートルの地下トンネルの、490メートルの地点で作業をしていた。調書によると、労働者は、地下150メートルの深さに取り残された。生き埋めになった65人のうち、遺体が収容できたのは2人だった。

 グルーポ・メヒコが所有する鉱山で起こった直近の事故は、2016年2月12日、サン・ルイス・ポトシ州のチャルカス鉱山で起こった。石炭8トンを載せた運搬車のケーブルが切れ、労働者5人が死亡した。

 グルーポ・メヒコ所有の鉱山で起こった事故による死亡者数は、合計で90人に達している。

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