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フラッキングの真実 (5)環境リスク:大気の汚染

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写真:フラッキング廃水を蒸発させるための貯水池

大気の汚染

 フラッキングによる採掘では、コンプレッサー、掘削塔、ポンプなどの機械を動かす燃料として、ディーゼルや天然ガスが使用されるため、排気ガスが排出される。また、採掘される天然ガスの主成分であるメタンガスも、井戸や管から漏出して大気を汚染し、温室効果ガスとなる。

 メタンガスの漏出率は、一般には1~7%とされている。米国の環境保護庁(EPA)の評価では約2.4%である。フラッキング廃水の貯水池から蒸発した蒸気からは、発がん物質であるベンゼンが検出されている。

 フラッキングによる天然ガス採掘と在来型の採掘では、どちらが多く温室効果ガス(天然ガスの漏出、および燃料使用による排気ガス)を排出するかという問題については、論争が絶えることはない。しかし、複数の調査結果によると、フラッキングでは、採掘前の井戸の掘削中にも天然ガスが漏出すること、地中の天然ガスがフラッキング水と共に地表に逆流してくることなどから、より多くの温室効果ガスを排出している。

 フラッキングによる開発の期間中には、機械の運搬や清掃のために、膨大な数の車両が必要とされる。車両の通行回数は、掘削プラットフォーム1カ所あたり4300~6600回である。フラッキングのオペレーションに加え、車両の通行も相当な大気汚染の原因となっている。特に問題となるのは、酸性ガス、化石燃料、微小粒子状物質による大気汚染である。

 フラッキングに使用される水を車両で運搬する場合には、さらに多くの車両が通行し、排気ガスの排出量が大幅に増加する。特に、大気中の微小粒子状物質の濃度に大きく影響する。

ガスの排出と地球温暖化

 フラッキングによる採掘中に漏出するガスの90%は、メタンガスである。それ以外には、二酸化硫黄、窒素酸化物、揮発性有機化合物などが漏出する。天然ガスは、燃料として使用する場合には、他の化石燃料よりも二酸化炭素の排出量が少ないが、フラッキングによる採掘を行う場合は、採掘過程でメタンガスが漏出するため、結局は気候変動を大幅に加速させている。漏出するメタンガスは、井戸1本から採掘される天然ガス全体の約8%にのぼり、在来型の天然ガス採掘時に漏出する量を上回っている。

 メタンガスは温室効果ガスのひとつで、その温室効果は二酸化炭素を上回る。従って、フラッキングによるシェールガス開発が気候変動に及ぼす影響は、石炭を燃料として使用する場合よりも大きい可能性がある。また、フラッキングによって採掘される天然ガスの、採掘時と燃焼時の温室効果ガス排出量の合計は、在来型の天然ガスの場合よりも3.5~12%多くなる。

 フラッキングが気候変動に及ぼす影響を明確にするためには、メタンガスの大気への漏出量を数値で表し、漏出量は2%未満だとするフラッキング企業の主張に疑問を投げかけることが重要だ。例えば、米国の海洋大気局とコロラド大学ボルダー校の最近の調査によると、デンバー・ジュールズバーグ盆地におけるメタンガスの漏出量は、管からの漏出や流通経路での漏出を考慮しなくても、4%に達していた。企業側が発表していた量の2倍以上が漏出していたということだ。

 米国のフラッキング推進派は、シェールガスの採掘と利用によって、米国のエネルギー自立が可能になり、石炭燃焼が減少すると主張している。しかし、米国の大気研究センターは、2011年の調査で、フラッキングによるシェールガス採掘時のメタンガス漏出率が今後2%未満まで減少する可能性はあるが、燃料を石炭からシェールガスに変えることで気候変動が軽減することはありえないと指摘している。

(ラ・ホルナーダ・エコロヒカ216号)

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