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2020年以降の社会保障制度に不安

フアン・カルロス・クルス・バルガス
Proceso 2012/07/06

 メキシコ地理統計局(INEGI、エドゥアルド・ソホ局長)は、2020年以降、医療・社会保障サービスの需要が、生産年齢人口と高齢者人口の増加により、圧迫された状態になると発表した。

 INEGIは、7月11日の世界人口デーを前に、この発表を行い、「人口見通しによると、いわゆる「人口ボーナス期」の第2段階から第3段階への転換は、高齢者の割合が増加して、従属人口の比率が上昇に転じる2020年である」と指摘した。

 「その段階において、労働年齢人口の社会保障サービスの需要に、総人口における大きな比重をもつ高齢者人口分の需要が、加わることになる」と、INEGIは明らかにした。

 INEGIによると、「人口ボーナス期」は、従属人口比率が減少する時期、すなわち、生産可能な年齢の人々の比重が、それ以外の人々の比重に比べて増加する、人口構成の変わり目の時期のことである。

 人口ボーナス期には、三つの段階がある。第1ボーナス期には、従属人口比率は減少するものの、まだ比較的高い比率を維持していて、労働年齢人口3人につき、従属人口2人以上の割合である。第2ボーナス期では、従属人口比率は、最も望ましい水準に達し、労働年齢人口3人につき、従属人口2人未満の割合となり、引き続き減少する。

 INEGIによると、1970年以降、メキシコの従属人口比率は下降しはじめ、2010年には、労働年齢人口100人につき、従属人口62人になった。これは、メキシコの人口が、第2人口ボーナス期にある、ということである。

 第3ボーナス期の間は、高齢者人口の比例的な増加のために、従属人口比率が上昇しはじめるが、労働年齢人口3人につき、従属人口2人未満の、望ましい水準を依然として維持する。

 メキシコは、10年以内に、このような人口構成になる。しかし、若年層の教育が十分でないことと、メキシコの人口におけるこの年齢層の失業率が高いことから、状況はそれほど楽観的ではない。

 教育という側面では、メキシコの多くの若者が、学校へ行っていない。

 2010年の国勢調査のデータは、15歳から19歳までの少年の42.7%と、20歳から24歳までの青年の77.1%が、学校へ行っていないことを示している。一方で、15歳から29歳までの若者の教育水準は、就学したことがない者が1.7%、小学校で少なくとも1学年を修了した者が15.8%、中学校で少なくとも1年間履修した者が36.5%、となっている。

 高校レベルの学歴を持っている者は、わずか28.5%、25歳から29歳までの青年のうち、4分の1(24.5%)が、大学レベルの学歴がある。

 雇用という点では、状況はあまり有望ではない。

 メキシコ雇用労働調査(ENOE)によると、2011年第2四半期の青年人口(15歳から29歳まで)の労働参加率(就労者と失業者の合計 ―訳者)は54.1%で、そのうちの91.3%が就労者である。

 対照的に、8.7%は、仕事を探しているが、見つからない状態にある。この青年層の失業率は、メキシコの失業率4.8%のほぼ2倍にあたる。「職に就けない若者のうち、8人に1人は、職業経験がないと申告した。これは、職業経験を得る機会がないことや、労働市場についての適切な情報がないためである」と、INEGIは明らかにした。

 また、「人口ボーナス期」が、先行する経済成長や備蓄なしに、経済的に不利な状況で訪れた場合、生産年齢人口にかかる従属人口分の負担のために、生産年齢人口から高齢の従属人口への、大規模な資金の移動が必要になってくる。

 「このことは、単に世代間の争いだけでなく、支払い能力の問題をも引き起こしうる状況を作ることになり、それが、医療や社会保障のような、要となる制度を、資金難に陥れることもありえるだろう」

 言い換えれば、(量と質の両面において)労働条件を改善しなければ、その不安定な状態が、社会保障制度に深刻な結果をもたらすことになる。

 実際に、メキシコの人口計画においても、次のように指摘されている。「課題は、今後数年間で創出すべき雇用の数だけではない。雇用の質も問題になっている。つまり、生産的で十分な報酬の得られる雇用を、より多く作り出すことが、課題であるということだ。そのためには、人材の熟練度と生産性を改善することが、特に求められている」

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