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メキシコシティ度100%のパストールのタコス

いつでも気軽に食べられるパストール(トウガラシ漬けの焼豚)のタコスは、メキシコ市民のお気に入り料理のひとつです。メキシコ市で、このおいしい料理に舌鼓を打ってください!

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カミーラ・モンテロソ
Mexico Desconocido

 ずっと以前、世界各地で感じる、その土地固有の香りについて話していたとき、ある外国人が言いました。「メキシコ市はタコスだね。メキシコ市の中は、どこでもタコスの香りがするよ」 そのとき私は、愚かにも怒ってしまったのを覚えています。軽蔑的な見方だと思ったからです。でも、もちろん、そんなことはありません!

 メキシコ市でタコスの香りがするのは確かだし、それはそれで、誇らしいことです。でも、メキシコ市は、様々な食のバリエーションを体験できる、世界有数の都市でもあるんです。いつでも、どんな料理でも、懐具合がさびしくても楽しめる。それって、すごいことですよね。

 食材を買う場所について、有名なシェフたちと話していたとき、みんながみんな、メルセー市場とゲレロ地区を挙げました。メキシコ市にとっても、シェフたちの厨房にとっても、重要な場所なのだそうです。なぜだと思いますか? その答えを、ジュリ・デ・ゴルタリさんとエドムンド・エスカミージャさんに聞いてみましょう。二人はシェフで、歴史家でもあり、料理学校を経営するほかに、メキシコ市内のグルメ・スポットの食べ歩きツアーも行っています。二人とも、この場所の出身です。

 メルセー市場とゲレロ地区。その歴史を追って見てみましょう。

 昔から、「メルセー市場を知るまでは、メキシコを知ったとは言えない」と言われていたそうです。でも、メキシコ市の治安の悪さがクローズアップされてしまったため、もう誰も訪れようとしません。でも、それは間違っていると思います。ジュリさんとエドムンドさんは、「若い学生の中には、メキシコ市の中心部へ行ったことさえない学生もいます。だから、ぜひこの食べ歩きツアーに参加して、私たちの土地が持つすばらしいものに触れ、再認識してほしいと思っています。参加した学生たちも、喜んでいます」と話してくれました。メルセー市場には、ありとあらゆる種類のすばらしく良質な品が、メキシコ全土からやってきます。こんな市場は、世界にもほとんどありません。だからこそ、世界各国の有名シェフたちもメキシコに来て、メキシコを知ろうとしています。だって、こんなにすごい市場がすぐそばにあるなんて、特にヨーロッパのシェフたちにとっては、夢のまた夢なのですから。

 市場内の店舗の店主たちは、大抵、代々そこに店を構えている人たちです。乾燥トウガラシの店(30種類以上のトウガラシを売っています。トウガラシを薫製にするのは、先スペイン時代からの技術で、メキシコ度100%です)、ニンニクの店(25種類以上の色々なニンニクを売っています。アホ・マチョ種は治療やおはらいに、小さい品種のニンニクは土鍋でフリーホール豆の煮豆を作るときに使われます)、トウモロコシの葉(トトモストレと言います。トウモロコシのおだんご「タマル」を包むのに使います)の店など、色々あります。バナナの葉やウチワサボテンが、まるで緑色の柱のように積み上げられているのにもびっくりします。このとてつもない市場では、果物や野菜の土や根を完全に取り除き、きれいな状態で売られています。これも、ほかの国の市場と違っていることです。

 この市場には、見たいものや聞きたいことがたくさんあり過ぎて、出てくるときにはぼうっとしてしまい、くらくらするほどでした。その後、メルセー修道院跡の内庭回廊(1535年)を訪ねるために、ウルグアイ通りへ移動しました。回廊は、もとは3本ありましたが、現存しているのは1本だけです。エドムンドさんによると、19世紀の終わり頃は、メルセー教会の壮麗な正面玄関と外壁は、厚い漆喰の層で覆われていて、フランス建築風の外観をしていました。しかし、メルセス会の有名なたくみだったクリストバル・カバジェロが建てた本来の外観を復元するため、1940年、幸いにも、この「お化粧」部分は取り除かれたということです。メルセー修道院跡の次は、とても美しく歴史の香り漂うコレヒドーラ通りへ向かいました(メキシコ市政府は、近ごろ、この通りでの行商を禁止しました)。コレヒドーラ通りとロルダン通りが交わるあたりに、アロンディガという建物があります。アロンディガは、トウモロコシを備蓄して価格を調整するための倉庫で、アステカ時代には、この場所に桟橋があり、ソチミルコから水路で到着する積み荷を降ろしていました。アステカ時代の水路と桟橋の名残は、今ではこのアロンディガ周辺に残るのみとなってしまいました。これこそ本当に、前時代の名残です。

 今回のグルメ散歩で一番のおすすめ店は、AQUI ES OAXACA(アキ・エス・オアハカ)という名前の小さな食堂です。アロンディガから一区画のラ・サンティシマ通り沿いにあります。開店48年、確かに、オアハカの本場の味です。私たちは、ほっぺたが落ちそうなトラジューダスとタマレスを食べました。チーズ、細切り肉入りのラード、干し肉、トウガラシのソース、フリーホール豆などの持ち帰りもできます。当然、すべてオアハカ産です。

 ゲレロ地区は、19世紀の後半、都市部の拡大に伴って開発され、巨大なメキシコ市の中でも最も伝統的な地区になりました。とにかく、至るところに飲食店がありますが、きれいな広場や19世紀の貴重な建築物もあります。マルティネス・デ・ラ・トレ市場(1957年)には、忘れずに行ってみてください。素晴らしい体験ができますよ。それに、伝統料理の店CAFE COATEPEC(カフェ・コアテペック)やロス・アンヘレスの聖地、閑静なマルテ通りもお忘れなく。パン工房SAN JOSE(サン・ホセ)(カメリア通りとエロエス通りの角)では、大人気のパンバッソ(サンドイッチのトウガラシ・ソース漬け)を、昔ながらの製法で作っています。ゲレロ地区のおすすめは、何といってもレストランバーUDG(ラ・ウニカ・デ・ラ・ゲレロ)でしょう。UDGのおすすめ料理は、子ヤギ肉です(クレジットカード払いの場合は、身分証が必要です)。

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